『ラストプレイ』感想・3
あさこの役=アリステアはわりと茫洋とした性格ということでいいのかな。
人の望みをかなえること、人の意志ばかりを尊重してきて自分の望みというものがなかった人。
そんな人がトラウマからピアノをなくして、
ムーアたちに出会って初めて「自分の望みどおりに生きてもいいんだ!」と気づき、
人生にとまどい、過去をなくし、再生するまでの物語。
けれどなんたって自分の望みというものが基本的にないから、役がぼんやりしてしまう。
つかみどころがない。
脇ならそれでもいいけど、これを主役として据える、男役のトップスターとして魅せるというのはむつかしそうな役だ。
それでも。
仮にこれがいつもの「宝塚」ならたぶん大丈夫なんだ。
前にすすむヒロインを受けいれ、背中を押す男=女の憧れ(かどうかは見る人によるだろうが)として存在し得るから。
だけどこれは現在の月組で上演されている話。
ヒロイン不在の物語だ。
アリステアは茫洋としていて、彼が背中を押すべき女はいない。
となると、下手するとアリステアは茫洋として物語上をたゆたうだけで終わってしまう。
スターとはなりえない。
しかもアリステアは少年以上青年未満の役。
一般的に宝塚で求められる、三十路男の色気とかをあふれさせてるわけじゃない。
それでも、あさこはスターに見えたんだ。
それは脚本の力じゃなくて、あさこ本人の力なんだろう。
力技でスターとして舞台に立っていたってことなんだろうと思う。
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