『ニューヨークに行きたい!!』感想・1

『ニューヨークに行きたい!!』11月25日梅田芸術劇場での18時半開演の舞台を観てきました。

開演前にすんごくノリノリで客席をあおってる指揮者がいたんだけど、塩田センセイで合ってんのかな…?

全体的な感想をまず。
(たぶんシビアめ)

終演後、ロビーや阪急電車内で公演について「面白かったね」「楽しかった」とみんな言っていました。
電車内の人たちも『ニューヨークに行きたい!!』のパンフレットを手にしていたので、感想はこの公演についてのもののはず。

面白かった。
楽しかった。

私も同意見です。
気持ちよく電車に乗れます。

でも、正直なところそれ以上のものはなかった。少なくとも私には。

――時間を少しさかのぼらせて、終演時の様子を思い出してみます。

芝居が終わって幕が下りる。
拍手があり、幕が上がって出演者たちのあいさつがある。
再び幕が下りる。

指揮者が率先して客の手拍子を誘い、「さあ立って立って!」とばかりにスタンディングオベーションを促す。
客席は立ちはじめる。
再び幕が上がり、出演者が礼を言う。

それで終わり。

東京公演は済んでいるとはいえ、大阪初日は非常にあっさりしたものでした。
カテコ&スタオベもあったんだから充分だとも言えるでしょうが、観客が熱狂した舞台ならこんなものでは終わらない。
何度でも何度でも出演者を呼びだす。
帰りたくない、感動が冷めやらない、興奮を伝えたい、一緒にいたいとばかりにしつこく拍手を打ちならす。
そういう熱気がなかった。

出演者が悪かったとは思わない。
作品が特別悪かったとも思わない。

ただ、出来のいいありふれた作品だなと思った。

「仕事で感情を入れないようにすると冷たい女だと言われるし、感情的になると『これだから女は』って言われるのよ」と憤るヒロインのリサ。

わかるんだけど、リサの悩みの種類が古いなぁというか今さらというか…。
すごくありふれていて、舞台化するには陳腐なんだ。

もちろんこの手の悩みが現代で通用しないなんて思ってはいない。リアルにある悩みだろう、きっと。
けれど、これって30年以上前からの悩みじゃないか?
リサが「現代の女性」で、作品の時代が現代を設定しているだけに、かえって古くさく感じる。
例えてみれば大正時代の着物はレトロでクラシックだけど、10年前のファッションはただの時代遅れでダサくなるようなもの。

現代設定なら、前述のリサの悩みからもう一歩進んでほしい。
もうちょっと時代を反映した悩みがあるはずだ。

これを今やる意味がわからない。
『ハウ・トゥー・サクシード』の古さが私に受けつけなかったように。
いったいいつが初演のミュージカルよ…と思ったら2007年ドイツのハンブルク初演ということでびっくりさせられた。新しいんでやんの。
『ハウ・トゥー・サクシード』だったら1961年初演ということで諦めもつくというのに…。

あー、でも考えようによってはリサの悩みがレトロだからいいのかな。
この悩みならたぶん大抵の人にわかるし。
作品全体の予定調和につながって、最後は深く考えずに「面白かったー」というところに落ちつけるし。

ミュージカルをみて感情を奥底から揺さぶられてあーだこーだ言うのが好きな人ばっかりじゃないもんな。
内臓をわしづかみにされるような感覚はゴメンだって人はいるだろう。
そういう意味でこの作品はいいのだろう。

ただ、初日の感じからして熱狂的に支持される気配はない。

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