轟さんの退団挨拶によせて

専科人事,専科

本日2021年10月1日をもって専科生にして劇団特別顧問の轟さんが退団されます。

私が宝塚ファンを始めたとき、轟さんはすでに専科生でした。

専科生である。
劇団理事である。
劇団のトップオブトップである。
大劇場に特別出演して、各組トップスターを差し置いて主演を務める人である。

轟さんの特殊な属性が、宝塚ファンのすべてに受け入れられるものではない、というのは承知していました。
とはいえ、ほぼ知識として知っていたにすぎません。

私のヅカファン時代のはじまりは宝塚歌劇90周年のころだったので、DVDでしか見ていませんが『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』が最初の強い印象だったはずです。
あの作品のトドコムって、素晴らしい萌えがあったじゃないですか。(特に薔薇蒐集家とROSSOさん……)
そのおかげで、トップオブトップとしての轟さんに嫌悪感や忌避感がほとんどなかったのだと思います。

そこから約15年。
轟さんは演者として円熟味を増し、しかし人として避けられぬ肉体的な衰えもあり。
轟さんが立場ゆえに与えられるポジションと、多くの宝塚ファンが求めるものとの乖離はいかんともしがたいな……と思うこともありました。

白薔薇の君とうたわれた春日野八千代様だってあるときから一線を退かれたはず。
春日野様の後任として専科に残られた轟さんは、どのようにソフトランディングされるのだろうか……と思っていました。

が、まさか、退団という形をとられるのは予想外でした。

ずっと宝塚に残られるのだと、宝塚に骨を埋められるのだと、私ならずとも多くのヅカファンは勝手に思っていたのではないでしょうか。
常にあると疑いもしなかった、足元が崩れるような気持ちにもなりました。

~ファンの皆さまへのメッセージ~

今、皆さまにお伝えしたいことは、心からの感謝の気持ちです。
ご縁あって出会えた方々、応援してきてくださった方々の、人生の一部に加えていただけましたこと、本当にありがとうございました。
これからも、宝塚歌劇を何卒よろしくお願い申し上げます。

宝塚歌劇公式サイト

本日、公式サイトに寄せられた轟さんのメッセージです。
シンプルなお言葉で、温かいお気持ちが感じられます。

また、直筆の色紙には「皆さま 笑顔の花束を 今までありがとうございました」と、サインを添えて。

与えられたのは「笑顔の花束」だけではないでしょう。
心無い言葉、誹謗中傷も多かったのではないか……と推察します。
轟さんはエゴサーチなどなさりますまいが、その気がなくても、いやでもなにがしか聞こえてくるものでしょう。

それでも感謝を述べて静かに去っていく。
タカラジェンヌだなぁ……。

退団がこんなとき(コロナ禍)でなければ。
大劇場でお別れの言葉を聞ければ。
できれば緑の袴でセレモニーを。

などと考えてしまいますが、過去にも「静かに去りたかった」と別箱で静かに退団されていった専科の先輩方がいらした覚えがあります。
轟さんも同じなのでしょうか。

大仰なセレモニーをしないのが轟さんなりのタカラジェンヌとしての美学であれば、それを尊重するのもヅカファンの務めでしょうか。

明日からの一般人としての人生が充たされたものでありますよう。
遠くからお祈り申し上げます。

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