『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』感想・2

星組公演感想,星組

メインキャストが集結してのプロローグすらない今作、2番手・せおっちの登場はだれよりも遅い。
芝居、半分くらい過ぎてたよね?

しかも2番手と番手格が高すぎてか、バイトすらないのであった……。
ぴーすけ、きわみくんもメインの役の出番は遅かったり短かったりするけど、バイトがあるだけファンにとってはマシなはずである。

満を持して登場したジャラルッディーン様(つい様付けしてしまうのはなぜだ)、登場の仕方がめちゃくちゃヒーローのようなのだった。
不倫をしたひっとんルスダンにより捕らえられ、ありちゃんアヴァクの手下のさりおセルゲイ、あまとムルマンが刺客としてさし向けられているという絶体絶命の状況でですよ。
セルゲイとムルマンを事もなげに斬り捨てて助けに現れたんですから。
そりゃ、本来は敵とはいえ命の恩人じゃないですか。

しかも我らヅカファンとしては、こっちゃんが同期のせおっちをどれだけ好きかというのを知ってるわけでして。
「こっちゃんよかったね!せおっちが助けにきてくれたよ!!」
と虚実をごっちゃにして感涙にむせびたくなるわけです。
だってこっちゃん、コロナ禍でジェンヌ同士すら会えなかったときに愛犬サブローの散歩を言い訳にせおさんちのあたりをウロウロしてたって話じゃないですか。どんだけ好きなのよせおさんのこと。
それとも人たらしすぎるせおさんが罪なのか。

しかもジャラルッディーン様、美貌の王子・ディミトリを超お気に入り。
ジョージア王国では酷い目に遭ってたね、でもうちではちゃんと迎えよう!!みたいな扱いですよ。しょっぱなから。
これは作劇上の問題だと思うんだけど、ディミトリがとらわれるのとトビリシ襲撃が同時すぎて、「ジャラルッディーン様、いつの間に王配ディミトリがゆえなき罪で捕らわれたこと知ったん? ていうか捕らわれた理由なんてろくに知らんやろうに、ひどい目に遭ってたってどんな思い込み?」とつっこみたくなったぞ。
たぶん実際にはそれなりの時間経過があるだろうし、ジャラルッディーンに情報が流れるルートもあったんだろうけれど。
(原作ではルスダン自らが情報を流してたような)

とまぁヒーローよろしく登場したジャラルッディーンですが、そりゃ単なる白く清らかな優しい男なわけもなく。
なんせジョージアには敵ですし、戦争ですし。
踏み絵を用いて改宗を迫り、従わぬ者は斬り捨てるという残酷なおこないもする。
「美しき王子よ」とか言ってたところとの落差がえぐい。
でもそうでなきゃ帝王たり得んわなぁ。

美しい上に控えめで知性もあるディミトリは見事ジャラルッディーン様のお気に入りになり、ついには信頼厚き友人となった。
とはいえディミトリの目的はジョージアを救うことで、いわば偽りの忠誠。
密書を鳩で送ったディミトリの計によりトビリシは見事奪還された。

スパイがいる……と気づいたホラズム陣営。それでもあくまでもディミトリは「友人」として遇する。
友人ってか、寵童の雰囲気すらあるけど。
ヒゲのせおさんに対してこっちゃん可愛いから。

みなお前をスパイではないかと疑っている。だがお前が違うというなら違うのだ、というジャラルッディーン様の心が広すぎて……なんかもう、寝返っちゃえよ!!と言いたくなるんである。
せおさんのこと好きなんでしょおおおお!!!(だから虚実をごっちゃにするなと)

寝返ろうにも時すでに遅く、ディミトリは服毒している。
そして今際のきわにジャラルッディーンの腕の中でジョージアとルスダンへの愛を語る。
それまでディミトリを「ルーム・セルジュークの王子」と呼んでいたかれがここに及んで「ジョージア王国の王配」と呼ぶのが愛なのである。
ディミトリの一番欲しかった言葉、一番大切にしていた称号がそれなのよね。

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