『Razzle Dazzle(ラズル ダズル)』感想・2

宙組宝塚大劇場公演『Razzle Dazzle(ラズル ダズル)』を3回観てきました。
1月1日の初日と、1月5日(日)の午前と午後です。

アビゲイル(アビー)のこと/みねりちゃん

今回、一番心惹かれるキャラクターはみねりちゃん演じるアビゲイル(アビー)です。
キキちゃん演じるレイモンドのフィアンセ。
レイモンドを見下した物言いをしていることもあって、レイモンドは彼女との結婚を拒否している……というキャラ。
『ME AND MY GIRL』のジャッキー要素をふたつに分けて、お金持ち(予定)の主人公と婚約する部分をアビーみねりちゃんに、お騒がせ要素の部分を(雨唄のリナを加味して)シャーリーンもえこに振ったみたいなかたち。

「ハリウッド一裕福な孤児」のレイモンドはまともに働いた経験がなく、放蕩三昧で生きている。
実際に手に入れたナイトクラブ「Razzle Dazzle」も赤字だしね。
「財産がなければあなたを心から愛する人なんて一人もいないわ」とアビーは言うが、レイモンドに愛嬌とビジュアルはあるものの、そう言いたくなる気持ちはわかる。

お騒がせ女優のシャーリーンの役を干した過去はあるけれど、そりゃアビーにしたら婚約者を破産させかねないほどの金遣いの荒い恋人なわけで、そのくらいは仕方ないところなのでしょう。言い換えれば、ちゃんとレイモンドの財産を管理する能力もあるわけだ。

私には、アビーは地に足のついたいい女に見えるんだよね。彼女の父親・リチャード・ウィンターズ(まっぷー)とのやり取りもとても常識的でまとも。ちゃんと社会と生活が見えている女性だと思う。

初日、レイモンドの気に食わない婚約者要素を持ったみねりちゃんアビーの行動原理がわからなくて困惑した。

なんでこんなことするんだろう?
レイモンドの素性を知らないまま彼を愛する女性が現れるかの賭けに乗るところも、撮影中止が伝えられた中でドロシーに会いに行くところも、最後に賭けの期日を伝えて決着をつけるところも、ストーリーの都合にしか思えなかった。

でも、それとは矛盾するようだけど、みねりちゃんの演技でアビーがちゃんと生きて感情も意思もある女性に見えた。

アビーはドロシーに会いに行き、エキストラたちの思いを知り、レイモンドが大切にしているものを知り、尊重することにする。
だからレイモンドの誕生日に賭けの結末を促す。
「あと10分しかないけど」と言いながら。

アビーは自分の負けを確信したまま、あえて決着をつける。
自分とレイモンドが結婚することより、レイモンドが幸せになることを願ったから。
みねりちゃん、発言と心情が違う演技うますぎるやろ。

アビーはなんというか……気の毒だよね。報われない。
ポッと出の田舎娘のエキストラ(=ドロシー)に婚約者を取られて、アビーの行動には益がないもの。益がないのに、レイモンドのために動く。
なんか、報われてほしい。
でも悲壮感がないのは、アビーが婚約者が幸せになったことを喜べる人だからだろう。

アビーがいい子すぎて、彼女を選ばないレイモンドに文句言いたくなるのが、困るっちゃ困る。

しかしだな、理由はどうあれレイモンドはアビーに謝ってほしい。でないとアビーが気の毒すぎる。
アビーとて今さら愛されていない相手と結婚したいとは思わないだろうから、結婚云々はさておいてだ。
なんならずんちゃんトニーが「(元)雇い主のお嬢さん」のために、レイモンドをぶん殴ってもいいくらいだ。

トニーのこと/ずんちゃん

この作品でものすごく好きなのがアビーとトニーのやりとりなんですよね。
ものすごく私の好きな芝居を観てる!って気持ちになるのよ。

ずんちゃんの役(トニー・デイヴィス)はともすると「主人公の友達の映画スター」以外の意味のないしどころのない役になりかねないと思う。
だけど、それを演技力で役を底上げしてる。

コスモ・ピクチャーズの経営破綻が明るみになるシーンからの、みねりアビーへの視線がとても良い。トニーの賢さと心の温かさを感じる。
アビーの想いはセリフでは語られない(言葉と心が裏腹な人だから)。でもそれをみねりちゃんは演じられる。

そして、その演技を強化しているのがずんちゃん。
トニーのアビーへの視線の優しさがあるから、アビーがきちんとした素敵な女性だと感じさせてくれた。高飛車でいけ好かない女、みたいな評判とは裏腹に。
語られていないところを演技で埋めてくるあたり、ずんちゃん・みねりちゃんという上級生の演技力はさすがです。

ラストで、初見では2人付き合ったりしないのかい!と思ったけど、今のままでいいなぁ。
ここで2人が付き合ったらアビーが乗り換えただけになるもんね。
今のままなら無私の愛だ。

ドロシーのこと/はるさく

アビーが別に悪い人じゃないから(言うことはひどいけど)、主人公がヒロインと恋に落ちるのがよくわからない。

はるさくちゃん演じるヒロイン・ドロシーは田舎・カンザスから出てきた女の子で、真っすぐでガッツがあり、純真。
ハリウッドの名のある女優達とは違うけれど、ほかのエキストラメンバーも気のいい人たち。

となると、ドロシーの特別性ってないんだよね。

ドロシーにとってはレイモンドは自分を救ってくれた王子様だと思うのよ。
だからレイモンドを好きになってもおかしくない。
街中で娼婦と間違われてたのを助けてくれたことも、慣れないハリウッドでの初めてのエキストラ仲間で安心できる友だちになってくれたというのも、そして映画が中止になりそうなところを財産をなげうって助けてくれたところも。

でもレイモンドがドロシーを好きになる要素って?
真っすぐさ?純真さ?可愛さ?華?ダンス?
今一つ決め手に欠けた。
レイモンドにとって自分が賭けの種にした罪悪感はあると思うけども。

はるさくちゃんの銀橋ソロはとてもよかったけど、それ以外でももうちょっとキャラが見える場面があったらよかった。

はるさくちゃんは可愛いし元気で歌も上手いけど、ドロシーはアビーに比べると書き込みが薄くてもったいない。

(関係ないけど、私は夢でも五感がはたらいてちゃんと痛みを感じるので、ほっぺたつねったら痛いから現実だ!はないんだよね。味覚も触覚もあります。ていうか、自分のほっぺたつねるくらいでなんでそんなに覚悟するんだ?)

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