『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』感想・1

ひなこ主演の宙組バウホール公演『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』を観てきました。
花組新公の日、10月24日(木)14:30の回です。

宙組生にとっては『PAGAD』以来の芝居で、そしていったんは立ち消えになった公演です。
元は2024年3月に上演予定でしたが(これが発表されたのは2023年9月はじめ)、2023年9月末に宙組娘役の死亡事件があって同年12月に今後の宙組公演中止が発表されたという経緯です。
上演は待ちかねました。

作・演出は斉藤先生。芝居の人というイメージではありませんが間違いなくベテランです。
先だっての大劇場公演のショー『Le Grand Escalier -ル・グラン・エスカリエ-』を手掛けてもおり、今の宙組生とのつながりも大きい。
愛のある演出家です。

突然ですが、作品運ってありますよね。

宝塚の舞台ではほとんどの役はオーディションではない。(オーディションがあってもあらかじめ選ばれた人しか受けられないことがほとんど)
大劇場での舞台出演が確約されている代わりに、役自体は本人には選べないし、作品だって選べない。
めぐり会った作品で、与えられた役を誠実に演じるのみです。

そのため、作品や役付きにはどうしても「運」の要素が大きい。
これから人気を上げていきたいタイミングでなんでこの役、この作品……ということも珍しくない。たとえ念願の主演作であっても。ええ。

そういう意味で、今回の『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』という作品と、「天地楽(ジョーイ)」という役は「当たり」でした。よかった。期待してなくてすいません。

ジョーイという役のかっこよさ、温かさがひなこにぴったりでした。
終戦間もない横濱という舞台設定にペテン師に裏稼業に……というところで湿っぽいお涙頂戴なものになるかと思いきや、意外にコメディ。ちゃんとエンターテイメントとして成立してました。

それでいて泣けるところは泣けるんですよ。
私はおさよ演じる田島房江にジョーイが真実を告白するところで泣きましたよ。すごくベタで予想どおりだったんですけど、それでも泣けるものは泣けるのである。

といって、やはり役者の力量は必要。
良い役者なら舞台の質を上げられるし役自体を良く見せられる、演出家の筆も乗るでしょう。
そういう意味で、ひなこの歌と芝居の実力はいいものですよね。
歌声は朗々と、セリフもよどみなく、コメディで笑わせることもできる。
サイコロを振るところもかっこいい。
ポスター写真の衣装もなかなかけったいだけど、体格がいいからか着こなす。

房江の甥に化けたジョーイが、(クロックムッシュ……どんな料理だ。クロックは時計、ムッシュは紳士だから……)と内心でやってるところは最高でした。

体格も顔も良く、ジョーイを演じるナニーロひなこさんはでかくて上手くて美しい。存在が強いわ。
終戦間もない横濱を生きる力を感じさせる、強くて明るい光でした。
ただ明るいだけでなく、弱さも知っているところがいいんですよね。

あ、愛称の「ジョーイ」ってなんやねんと思ってたんですが、「楽」=「Joy」からだったんですね。くそう、気づかなかったぜ。

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