『Liefie(リーフィー)-愛しい人-』感想・3

初見時、第1幕終了時の感想。
「噂には聞いてたがほんとに1幕がほのぼのしてるだけで終わった。逆にすごい。」

じゃあ2幕で盛り上がるんだろうか――とうっすらとした期待だけをしていたんだけど(というかほぼ期待していなかったに近い)、結局ほぼ盛り上がりはなく終わった。
なんとなくまとまったけど、そもそもが事件らしい事件もなかったので、ほぼ変化がなかった。

「なんで付き合ってないの、この2人」と言われたほのかダーンとはづきミラが結婚することになり、ついでにかがみーピーターと真澄アンナがいい感じになり、だいやレオはなんかしらんけど顔は怖いがどこまでも優しい大工のハンス(峰果のゆかちゃんさん)に無条件に可愛がられ、まいらジェームスと初音ヤンは「実は家族だったんだ」と大事件のように知らされた。
多少の進展はあったけど予定調和。

事件らしい事件がレオの突然の暴言&殴打しかない時点でこの話が盛り上がるの無理やろ。というのが終演後の感想である。

ーーー

15年前、大型トラックと自家用車の自動車事故が起こったらしい。
この事故でヒロイン・ミラは奇跡的に生き残ったものの、両親は死亡。
それがきっかけでミラは笑えなくなってしまった。

この自動車事故の記事を書いたのがほのぼの新聞社――じゃなかった、ヴェーグ新聞社のエース・ジェームス(まいら)。
その記事は新入社員・ピーター(かがみー)の記憶に残っているほど素晴らしいものだったらしい。

15年を経て、ジェームスは自動車事故が忘れ去られないように再び記事を書こうとする。
事故の遺族であるミラにインタビューすることは彼女の心の傷をえぐることになるかもしれないが、ジェームスは「人に嫌われても、伝えなければいけないことはある」という使命感に燃えている。

人を笑顔にする(≒ミラを笑顔にする)記事を書きたいと思っている新聞記者のダーンは、ミラと語り、ジェームスと戦いながら、「Liefie」という愛する人のことを書くコーナーにすることで決着する。

ーーー

たぶんね、15年前のミラの両親が亡くなった自動車事故を新聞で取り上げるかどうかがダーンとミラの葛藤になって盛り上がるところだったはず。
なんだけど、ミラがさほどトラウマ抱えてなさそうで…。上手く笑えない設定も不発。(あの変顔は一体……)
だから、みんな何を悩んでるのかよくわからないまま終わった。

そもそも、大型トラック対自家用車の事故って15年前のものを掘り起こすほどの社会的意義があるもんなんだろうか。
本人たちには一生にかかわる大事件だとしても、世間にありふれた事故にしか思えない。
それをピーターの職業を決定づけるほどの記事にできるジェームス、マジで新聞社のエース。

演じている花組生はすごく真摯で演技も上手かったんだけど、どうにも背景がしっくりこないから熱量の無駄遣いだった。

もし、15年前の自動車事故を再発防止キャンペーンかなにかにするんだったら、それなりの社会的背景が欲しいと思うよ。

――たとえば。
ミラの両親が政治家なり社会活動家なりで、それに反対する勢力との抗争の中で命を落としたとか。
15年前の事件の生き残りであるミラは事故のショックでうまく笑えないまま大人になり、祖父や友人アンナも心配している。
15年前にその事故の記事を書いたジェームスは、数年後に結婚して子どもも儲けたものの、何らかの理由で妻子とは離れて暮らすようになった。
ジェームスの妻子も町に戻ってきていっしょに暮らせるようになった矢先、反対勢力が再び力を盛り返しているから、ジェームスは社会正義のために筆を執ろうとしている。
しかし、ダーンは新聞でのキャンペーンが反対勢力を焚きつけ、ミラの身をおびやかさないかと恐れている――みたいな。
(で、主人公やヒロインと同世代のレオはもしかしたら反対勢力側の遺児で、後ろ指をさされながら育ったのかもしれない)

ついでに言えば、ヒロインやヤン、そして特にレオが幼なすぎるから、10年前の事件くらいでいいかもよ。

ミラに暴言を吐き、ダーンとケンカしてきたレオに「お前の手が痛かっただろう」と気遣うハンスは自分に優しくしてくれるレオの望んでいた人なんだろう。だからレオは心を開いたんだろう。

ってのはわかるんだけど、いくらなんでも物わかりが良すぎやせんか。
まず喧嘩の理由を聞きなさいよ。そして誤ったことは正しなさいよ、大人として。とつっこみたかった。
でもそこでまず「レオが大事!!!!」と前面に出してくれるからこそレオは心を開いたのか……。ああ、甘々。

「お前の手は優しい手だ、人を傷つける手じゃない」とハンスに言われて「優しくなりたいです」というレオに「バスケがしたいです」というスラダンのミッチーがかぶった。ハンスは安西先生か。
ようわからん作品だったけどゆかちゃんさんの包容力無限大である。

思い切って髪を刈り上げただいやレオは外見はいかにもやさぐれているんだが、街を見下ろしてうろうろしてるさびしそうな視線や、優しさにふれて簡単にコロッとなるチョロさも含めて高校生以下である。
せっかく稀代の色気シャバダバな花組男役・だいやなので、もうちょっとまともに大人の役をやらせてやってくれ……。

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