『黒蜥蜴』感想・3

宙組大劇場公演『黒蜥蜴』の感想の続き。
初日含めて2回観劇しました。

黒蜥蜴=緑川夫人……はるさく

黒蜥蜴=緑川夫人。タイトルロールにふさわしい迫力と演技でした。
はるさくちゃんは元よりきれいなんだけど、声の美しさやセリフの抑揚などで特別感を出せる娘役。
今回はあらゆる声色を駆使し、雨宮ら彼女のしもべも、警察も、岩瀬氏も、そして観客をも手玉に取る。

早苗の様子に船に明智がいると感じて挙動が変わる様、人間椅子の明智に語り掛けながら無言で手下たちに指示を出すなどやることが多い。けっこう大変よねぇ。

終盤、愛する明智を椅子ごと簀巻きにして海へ投げ入れる。その前に切々と愛の言葉を告げるところが見物。
本心から愛を語りながら静かに追い詰めていく。言葉と心と行動が一致しないのが、黒蜥蜴と明智の共通点である。

本心と行動のちぐはぐさ、よく考えているようで無邪気な、子どものような残酷さと純粋さ。
自らが明智を手にかけるよう指示しながら、明智の命を奪った手下たちを責める。この辻褄の合わなさ、不条理さにも彼女の真実があるのだと観客に思わせられるのははるさくちゃんの凄さである。

舞台としては、着道楽ぶりを発揮してどの衣装も素敵。ドレスやお着物が緑色なの、わかりやすくて親切でした。

1回目の早苗の誘拐事件で中之島のホテルから逃亡する緑川夫人。
舞台だと男装の麗人の雰囲気ですが(あくまで女性のパンツスーツ)、元の戯曲だと男装です。
長身で細身のタカラジェンヌならではのかっこよさです。

東京タワー売店での緑の着物にサングラス姿も最高。
和装ながらとってもうさんくさい。
こんなに怪しげなヒロイン、宝塚ではそうはお目にかかれない。

雨宮潤一/マイティー

マイティー演じる雨宮潤一。名前からして湿っている。
顔がよくて中身のない男である。中身はないけど欲や感情はある。
緑川夫人に執着して、彼女の愛を得るためだけに働く。忠誠心とはちょっと違う感じがする。緑川夫人にはすげなくあしらわれるのも、中身のなさゆえかな。
この「ガワ」の美しさがマイティーは絶品。冒頭のジゴロのようなダンスシーンはマイティーの本領である。
生命力が爆発してるイメージのマイティーなのに、こういう役もできるのだな。

緑川夫人の命に従って働くも扱いはさんざんである。
不憫であるが、たぶんそこから栄養を得るファンは多い気がする。

緑川夫人の裏をかいて葉子(早苗)と檻に閉じ込められる場面がコメディになるのは予想外でした。
個人的にはシリアスで見たかった。

「一体僕はいつになったら爬虫類になれるんですか!」というマイティーのセリフ、文脈知らないとすごいものがあるよね。原作どおりです。

明智小五郎/ずんちゃん

今回はタイトルロールが黒蜥蜴=はるさくちゃんであり、セリフの量、出番、見せ場どれも黒蜥蜴に寄っている。衣装の華やかさも黒蜥蜴が勝る。
本来、この作品での明智小五郎はあくまで黒蜥蜴の敵役というポジションで宝塚の男役トップとしては出番の面で渋いのであるが、キャリアと演技力のずんちゃんである。
冒頭の明智登場シーン、存在の仕方で黒蜥蜴と響き合う闇を見せられるずんちゃん。さすがよ。

大阪のホテルでの緑川夫人とのトランプのやりとり、犯罪を語ることばのきらめき、似た魂を持つ者同士の惹かれ合う様、コート姿の美しさ、岩瀬氏に見せる冷たさ。
静かにひたひたとやってくる、夜闇のようなかっこよさである。

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