『狐花』観てきた

八月納涼歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)』を観てきました。
納涼歌舞伎だから幽霊とかの怖い作品をやってるんですね。
8月15日(木)18:15開演。

八月納涼歌舞伎|歌舞伎座|歌舞伎美人 (kabuki-bito.jp)

京極夏彦。
小説家デビュー30周年を迎えるそうで……懐かしい。学生時代に読んだなぁ。デビュー時代から存じ上げておりますとも。
あの頃、学校で流行ってたんですよ。当時の文学オタク系の女子はだいたい京極作品を好きだった覚えがある。
「辞書か」「電話帳か」「鈍器」「バーベル」と突っこみながら、勉強の合間に読んでましたね
とかいって、昔から趣味に生きてたのであんまり勉強しなかったんですが……。

大学受験が本番化する高3の3学期に「まだ読んでないけど貸すよ。高校卒業したら(県外行くし)貸せないから」と新刊を貸してくれた同級生もいたっけな。愛ですね。いや、勉強しろや。

と、懐かしくなって歌舞伎のチケットを取ってしまいました。
出遅れたのでお高い席しか残ってなかった……不覚。

中禪寺洲齋
萩之介/お葉
近江屋娘登紀
監物娘雪乃
辰巳屋番頭儀助
辰巳屋娘実祢
的場佐平次
上月家老女中松
辰巳屋番頭仁平
信田家下男権七
雪乃母美冬
近江屋源兵衛
辰巳屋棠蔵
雲水
上月監物
幸四郎
七之助
新悟
米吉
橋之助
虎之介
染五郎
梅花
廣太郎
錦吾
笑三郎
猿弥
片岡亀蔵
門之助
勘九郎

話は戻って、京極夏彦原作の八月納涼歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)』。

一面に咲く彼岸花が印象的な作品でした。
そしてラストは彼岸花が降り注ぐ。
彼岸花の別名と、登場人物がリンクする。

舞台らしいビジュアルの美しさが圧倒的で、これこそ生観劇の醍醐味と思えるものでした。
彼岸花を使った設置や演出は「映える」。

歌舞伎だけれど歌や踊りはほとんどなかった。
見得を切るようなところもほぼなかった気がする。
三味線などの和楽器は使われているものの音楽のつけ方も独特で、歌舞伎というよりストレートプレイだろうか。

最後の場は中禅寺洲斎(幸四郎)と上月監物(勘九郎)の長い長い芝居。
それも台詞での応酬が主で、動きは少ない。
力のある役者のぶつかり合いだが、けっこう辛いものがある。どうしたって観客側の集中力も試されるので。中禅寺洲斎のビジュアル自体も渋いし。
歌舞伎的な外連味が薄いので、歌舞伎らしい華やかな見せ場を期待してた身には物足りなさを感じた。
でもこういうのも「歌舞伎」のうちなのでしょう。

面白かったところは、やはり七之助の「萩之介/お葉」の二役。
この男女の演じ分け――というか、女たちを魅了する謎の男・萩之介が女中・お葉を演じてたということなんだが、それを納得させる美しさがある。
しかしだな、女に化けてて身近な人間が気づかないもんだろうか……。同じ顔だぞ。
そして、美貌の女中ゆえにもし夜伽を命じられたりしたらどうするんだ。元は陰間だから大丈夫なのか、隠しおおせるのか。

役の多さも面白い。
萩之介にまつわる女たちも可愛らしい娘から近江屋娘登紀のようにふてぶてしいのまで、さまざま。
監物娘雪乃の米吉さんはザ・娘役ちゃんだ。

的場佐平次は「ぶっ刺さる」役。
お兄ちゃんへの愛でなんでもやったのにね……気の毒だわぁ。もちろんやったことはひどいけど。

最後によくわからない自慢をさせてください。
うちには作者・京極夏彦の生写真があります。
昔の職場の先輩が「京極夏彦が仕事で金沢に来たとき撮らせてもらった」というものをくれたんである。「私とのツーショットはいらんと思うから、単独のやつね」……わかってらっしゃる。
だからなんだというわけでもないんですが。

原作は歌舞伎とはやや違うらしいので、そのうち原作も読もう。

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