『FORMOSA!!』感想・1

雪組シアター・ドラマシティ公演「『FORMOSA!!(フォルモサ)』-空想世界の歩き方-」を観てきました。主演はあがちんこと縣千氏です。
12月8日(日)12時、16時、12月9日(月)12時30分の3回観劇してきました。

これもただの自慢なんですが、今回、座席の運がすごくて。
自力では最前列を当て、お友だちのツテで譲ってもらったチケットはいわゆるとちり席でこの上なく見やすかった。
芝居を観るにはとちり席(7~9列目)のセンターって最高なんですよね。オペラグラスはなくてもいいし、全体も見れるし、視線も飛んでくる気がする。
もうがっつり味わわせていただきました。

好条件での観劇だったからという幾ばくかの影響があるかもしれませんが、今回、思いのほか面白かったです。
すいません、熊倉センセイの作品にさほど期待してなかったんですよ。
あと主演のあがちんも……芝居の人じゃないし……。
(といって観ないという選択肢はない。謎の見守りモードである)

熊倉先生は今回の『FORMOSA!!』が3作目。
バウデビューが極美くんの『ベアタ・ベアトリクス』、2作目があみちゃんの『Golden Dead Schiele』(これは未見)です。
3作目があがちんということで、ただの偶然でしょうが、宝塚音楽学校の講堂機械担当が連続主演しているのが笑える。

主人公・ジャン(縣)は孤児院で育ち、孤児院で多くの本を読んで空想を膨らませる少年時代を送った青年。
ジャンは貧しさゆえに詐欺を行い、巡礼する偽修道士として日本人を騙って喜捨を乞うようになる。
ある日イギリス国教会の牧師で詐欺師のイネス(華世)と出会い、フォルモサ人のジョルジュ・サルマナザールとして一攫千金をもくろむ――というのが物語の発端。

ジョルジュ・サルマナザールとイネスの詐欺にイギリス中が熱狂する背景としてイギリス国教会とイエズス会(プロテスタントとカトリック)の対立があり、また、サルマナザールが創造した空想上の人物であるメリヤンダノーに彼自身が囚われていくのが面白いところ。
予想外に面白い舞台で驚きました。

そして出演者。
あがちんはあまり芝居の人ではなかったのですが、今回はとてもよかった。

というか、今回のサルマナザールはあがちんにとってやりやすい役だったんじゃないかと思う。
役の設定自体も本人に合ってるだろうけれど(今作の本が好きで空想家でというところは本人と重なる)、ストーリー上で感情を乗せやすい。

あがちんはコメディなどの間で笑わせるのはさほど得意じゃないし、舞台上で周囲との関係で「どう立ち回るべきか」みたいなのも苦手そう。
場の雰囲気だけでそれっぽい人格をつくって演じるのがどうもヘタ。
技術があればそのヘタさもバレにくいんだけど……というのが、これまでのあがちんだと思う。

サルマナザールがどうして「フォルモサ出身の修道士」としてロンドンを狂乱の渦に巻き込み、しかしイネスとの関係で苦悩し、一旦はサルマナザールとして生きることを選んだものの結局は偽のすがたを捨てようとするに至ったのか。
この思い悩む姿が鬼気迫るほどの真実みのある演技になっていた。
それもちゃんと脚本上の積み重ねがあってこそだけど。

ついでにいえば、あがちんの中の人ご本人の、なんとも人間関係が独特そうで不器用そうな感じが、サルマナザールの追い詰められ方にハマってたと思う。器用に立ち回るとかできないのよね。
良くも悪くも嘘をつけない。
『フォルモサ誌』は偽書だしでたらめを並べてるけど、あれは嘘というか(嘘だけど)妄想の産物だから。
いや、私があがちんのなにを知ってるんだって話ではあるんですが。

演技者・縣としてのターニングポイントであり、新2番手としての後押しをするいい役だったと思う。

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