花組版『ドン・ジュアン』感想・2

7月21日(日)にダブル観劇してきた花組御園座公演『ドン・ジュアン』の感想の続き。
主演は、初演でラファエルを演じていたひとこです。

私は腐った人なので腐った話をしますね。とあらかじめ断っておきます。

前回、ドン・ジュアンとマリアが出会う場面でドン・ジュアンが少女シシィに恋したトート閣下のようだった、と書きました。
この感想自体に間違いはないのですが、それと同時に騎士団長の亡霊とドン・ジュアンの関係がトート閣下とシシィのようだとも思っていました。
亡霊がトートでドン・ジュアンがシシィでかつトートでマリアがシシィとなるとややこしいですが、これは単に私の引き出しが貧弱なだけでしょう。

初演の雪組だいもん版の『ドン・ジュアン』では、騎士団長の亡霊(がおりちゃん)は俯瞰的な位置にいるように見えました。
だいもん演じるドン・ジュアンを「愛の呪い」によって高い位置から導く役。次元や位相が違うので、直接的な関わりは少ない。
演技者としては別格寄りのポジション。
円形の塀のような作り物の上でサパテアードを踏んでいたのも象徴的でした。

対し、今回の花組版ではひとこの同期・あかさんが騎士団長の亡霊を演じる。
演じ手同士の関係性が舞台でも影響しやすい宝塚歌劇の舞台でもあり、初演よりもドン・ジュアンと亡霊は近い位置にいるように見えました。
ドン・ジュアンの愛はもちろんヒロイン・マリアに捧げられるものですが、それとは別に亡霊とも深い関係をもっているような、そんな印象。なんなら亡霊がもう一人の相手役のように見えました。
さすがひとあかだぜ……。

よくわからないのはドン・カルロが亡きドン・ジュアンを偲んで評する「天使のようなまなざしで魅惑する悪魔のような男」という言葉。
ひとこのドン・ジュアン、劇中で誘惑しているアンダルシアの美女にすら「天使のようなまなざし」を見せてないじゃないですか。
なにを思って「天使のようなまなざしで魅惑する」って言ってるんですかね、ドン・カルロさんは。

今、初演の雪組版を見返したんですよ。

そしたら、「悪の華」の望海ジュアンはドン・カルロについでに抱かれてやってもいい的に煽ってる演技してましたね。
薔薇で頬を撫でるわ押し倒すわ薔薇でカラダをなぞるわ抱きつくわ噛みつきそうな距離で顔寄せるわ。
咲カルロちゃんはめちゃくちゃ優等生だから翻弄されちゃうし。(修道院を勢いで出てきたエルヴィラよりよほど修道院にいそう)
そりゃ「天使のような眼差し」って言うわ。

ドン・ジュアンさん、初演版は母親すら手篭めにしてた(らしい…KAAT版の話)からね。そりゃ男くらい抱くわ……っていうか抱かれるわ。宗教的なタブーなんて全無視。ドン・ジュアンの罰当たり度が段違いですよ。

というわけで、雪組版はたぶん2人はおヤりになったことがあって、そのせいで「天使のような」云々とカルロちゃんは寝言を言っちゃってるわけでしょう。
ゆえに「憎んでいなかったといえば嘘になる だがそれ以上に愛してもいた」という愛憎まじった歌詞もわかる。

花組版のドン・カルロ(らいと)には、こういう性的な煽りはしてなかったと思うんだよね。
なので、番手的に亡霊あかさんが2番手、ドン・カルロのらいとは3番手らしく見えました。

でもあかさん演じる亡霊の出番自体が大きく変わってるわけじゃないですからね。
スターらしい存在感で役を見せたあかさんはさすがです。
「私が運命の相手ですが、なにか?」とすら言いそうな亡霊は素敵でした(笑)。

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