花組版『ドン・ジュアン』感想・1

花組御園座公演『ドン・ジュアン』を観てきました。
7月21日(日)11時公演と15時30分公演です。
1階席と2階席で観られたのでありがたい。

だいもん主演の初演・雪組版から8年。
記憶が薄れているところはあるものの、鮮烈な印象を残した作品です。
それが、大きく生まれ変わりました。

ストーリーの流れ自体は大きな変化はありません。
しかし、演出の変化だけでこんなに違いが出るとは。
もはや別作品の趣さえあります。

すごい。
こんなに変えていいんだなぁ。

雪組のだいもん版も、今回の花組ひとこ版もどちらも素敵な仕上がりです。

前回のだいもん版では「赤い薔薇」が鮮烈でした。
「悪の花」でだいもんが「花弁(はなびら)」と口にするとき、真っ赤な花びらが散る幻影が見えるようでした。
ドン・ジュアンも赤い薔薇の中からの登場でしたしね。

今回のひとこ版は、「石」が象徴的なモチーフ。
プログラムで演出の生田先生が言っておられるように、

・「石のように冷たい心で捨てる」男ドン・ジュアン
・石を彫る彫刻家のマリア
・殺された騎士団長は石の亡霊

という石によるつながりがあります。

そこで「石」を中心に据え、冒頭の生前の騎士団長と騎士のシーンは、騎士たちすら衣装が石のようになり、またドン・ジュアンの登場は石の薔薇。

演出によるものか本人たちの持ち味かは定かでありませんが、ドン・ジュアンも愛欲と狂気の色が濃かっただいもんに対し、ひとこは闘いと死の色が強い。
石のような冷たい心を持った「死」の色濃いひとこドン・ジュアンが、美咲ちゃん演じる彫刻家マリアと出会って「生」の息吹を見せるのが印象的でした。

2幕終わりごろ、美咲マリアが駆け出してきたときは、肖像画から飛び出してきたシシィのようでしたね。
生まれてはじめて恋するドン・ジュアンはシシィに恋したトート閣下のような雰囲気でした。
「エメ」も、歌唱力でねじふせるだいもんに対し、ひとこは恋する瑞々しさを演じて素晴らしかったです。

16

コメント

タイトルとURLをコピーしました