月組『エリザベート』感想・6

2020-12-26月組公演感想,月組

みやちゃんが27日から無事復帰されたとのことで、ちょっとレアになった代役の話。

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●開演早々に出てくるルキーニ。
第一声がルキーニだから責任もほかの役の比じゃない。
その任を担った代役・ルキーニおだちん、100期生研5。
舞台上での危なげのなさがすごい。

狂気をはらんだぎらついたイタリアの小男。
発声もクリア。
狂気と正気の往還がまた見事。
代役と知らなければふつうに本役として見られるルキーニでした。

2幕最初の写真撮影は「きれいな姉ちゃんがいたぜ。笑ってくださいよ。ハトが出ますよ」とあっさりしたもの。
早えーよ!!と客席がウケてました。

初回だけじゃなく午後の加美乃素貸切も同様だったので、アドリブは入れない方針だったのでしょう。

●れいこちゃんのフランツもまた代役と知らなければ本役と思って観ただろう出来でした。
歌うまいし、芝居できるし、なんつっても「皇帝」なビジュアル。美しさと気品がある。

ちゃぴシシィとの絡みには「同期でラブシーンやってるで(笑)」と茶々を入れてしまうのだが(これはもはや私のサガだ)、そういうツッコミを抜きにすれば非常に良いカップルであった。
突発的な非常事態において、相手役が気心の知れたベテラン娘役というのは頼もしいものだろうし。

元がルキーニだったこともあって、フランツも黒髪のまま演じた。
顔色も、心なしか浅黒かった。れいこフランツ、外交でお出かけ多いんだろうな……。

なお、初回ではルキーニが入ってた顔色は、午後の加美乃素貸切には白い貴公子・フランツになっていた。

れいこちゃんのフランツの基本は「困ってる」に見えた。

マデレーネとの一件も、誘惑されながら「美しい、どうしよう、困る、けれど美しい、いけない、だが一度くらいはいいんじゃないか、一生に一度くらいは……」と思っているようだった。
葛藤のさまが細やかで、抑えた演技の中に心情が伝わってきた。

シシィに「君の美貌が力になる」と歌うときも、「本当はこんなことに美貌を使いたくない」と思っていた。

――私も『寛容で善意の皇帝』と呼ばれたかった。
美しさで人気取りをするのは間違いだ。誠意をもって民衆に対するのが皇帝の義務だ。信念をもって、国家と臣民のために尽くさねばならない。
だが、そんな悠長なことは言っていられない。
国のためにも、君のためにも、このような外交はあってはならないが、しかし――。

と生真面目に思っていそうな皇帝だった。
ただし、これは初回公演の感想で、2回目に観たときはそれほどでもなかった。
もしかしたら急な代役であたふたしてる中の人が透けてたのかもしれない。

そういや成人したルドルフとすれちがう場面で、「夜のボート」でつけるようなクマみたいなヒゲのときがあったな。
段取りとか、いろいろと大変だったんだと思うわ。

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