『WEST SIDE STORY』感想・2

宙組

『WEST SIDE STORY』を梅芸で観て驚いたことの一つが真風の若さ。

若い。若々しい。ピュアだ。

昔から「老成した」といわれてきた大人っぽい雰囲気や落ち着き・色気をトニーの中に封印して、ただシンプルに気持ちよく、アメリカの若者として生きていた。
勤め先であるドクのドラックストアにリフを迎えたときのやりとり、マリアとの出会い、マリアが働くブライダル・ショップでの結婚式、どれもが素晴らしかった。

特に結婚式は、トルソーをリフや両親に見立ててのご挨拶が可愛くて。
「お父さん……好きだ!」とか、もう何言ってんの!?って感じなんだけど、トニーにとっては愛するマリアを育ててくれたお父さんなんだから好きになるに決まってる!って感じだろうか。

家庭に恵まれなかったジェッツの中で、トニーはまともな家庭に育ってるんだろうな。
でないと、まずは敵対方向に進むと思うもの。
トニーはドクのことも敬愛しているし、まともな大人に対してはちゃんと信頼の心を持っている。

そんな彼だからこそ、マリアが亡くなったと知ったとき(誤解だけど)のエニボディーズへの言葉が悲しかった。
女の恰好をしろ、スカートを履け、と。

トニーが今までエニボディーズにどう接していたのかは知らない。
けれどあんなに吐き捨てるように、エニボディーズにとっては呪いでしかない言葉を言わなかったはずだ――と思う。
昔からそう言っていたならエニボディーズはあんなふうに寄ってこなかっただろうし。
あとは、単なる私の希望として、トニーにそういうことを言ってほしくないからというだけの理由。

あの場面でも心をざくりとえぐられた。
マリアを失ったトニーの闇が舞台に満ちた。

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宙組

Posted by hanazononiyukigamau