『HIDEAWAY ハイダウェイ』感想・3

OSK

オギーといえば水というくらい、オギーと水の親和性は高い。
遺伝子レベルでなにかあったんですか!?と思うほどにオギーに水の場面を描かせると闇とかドラマとかが生まれますよねぇと思ってます。
宝塚時代からオギーの名場面は水に関わるところが多くて。

列車の場面から海の場面、【船、歌う水妖】へと。

この場面の水妖=城月さんの歌がすごすぎる。
音域も、語るような歌も叫びも、なにもかもがすごい。

水妖の歌は船を沈ませる。
けれど彼女の歌は生き残った恋人を呼んでいるのでも愛を疑っているわけでもない。
いつか一人で水底に沈み消える自分の心を鎮めるために歌っている。

初めて聴いたときは人を引き込む恐ろしい声に聞こえたものが、2回目には彼女の気持ちを知っているがゆえにより切なくこちらの心が切り裂かれるように届くのだ。

駆け落ちの途中、不幸な事故で恋人を喪った男=華月くん。
かれは水妖と化した恋人の声を聞くためにいつも船に乗る。
愛を貫くために死ぬべきなのかと自問する、その切羽詰まった感情に引き込まれる。

消えた彼女に男は水底から硝子のかけらを拾い、彼女の名を腕に刻み、流れた血を手向けの花とする――と。
この言葉(記憶で書いてるから正確ではないけど)の美しさと詩情がオギーである。
水妖の歌が人を呼ぶためではないというのが悲しく切なく、美しい。

オギーなので作詞のレベルが違うし、芸術的な完成度も高いし、まずあの世界観が並みの演出家とは段違い。
でもオギーの芸術性って真似してできるもんじゃないからなぁ(ヘタしたらただのモドキだし中二病だ)。

でもって出演者のクオリティがすごい。
華月くんも翼くんもすごいけど、やっぱり城月さんだなぁ。
(彼女のOSKでの序列がそんなに高くない理由がわからん……)

とにかくすごいものを観た。

ただし、この90分公演を同日に2連続で観るのは私には辛そうだった。
完成度も満足度も高くて腹十二分目になってしまうからで、これがほどほどの完成度の腹八分目作品ならたぶん同日連チャンできた。
ものすごいものが襲ってくるから、それを受けるにも体力がいるのよ。
『ソロモンの指輪』を観たあとぐったりしたような感じかな? でもあれよりは削られないような。エンタメ部分も多いし。

再演はむつかしいみたいだしDVD/Blu-ray化もされなさそうだから、気になった方はCDをぜひどうぞ。(会場で予約を受け付けてたけど、そのうち公式HPでも受け付けるのでしょう)

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Posted by hanazononiyukigamau