宙組『エリザベート』感想・5

2020-12-26宙組公演感想,宙組

『エリザベート』4回目を観てきました。
私が観たのは、初日(7月22日(金)15時公演)、翌23日(土)11時、31日(日)11時、8月12日(金)13時公演。

初日と翌日に観たときは、はにかみ屋寄りのみりおんシシィに「こういう迫りかたもあったか!」と膝を打ちました。
歴代シシィに比べて内気そうで、言いたいことを言うのが苦手でコミュニケーションを取るのが得意じゃない。
自分の内面にこもっている「弱い」シシィ。

その翌週(31日)に観たときは生命力が強くなってて、私は少々不満でした。
せっかく面白いシシィだったのに!と。
歴代のシシィに近い、「強い」シシィ。
もちろん、どちらが好きかは好みなのでしょう。

私の場合は弱いシシィが好きというより、みりおんシシィのこれまでにない造形がその新しさ・珍しさゆえに愉しんでいるといった感じです。
アプローチの仕方が面白くて、『エリザベート』に新たな発見をもたらしてくれるので。

昨日12日(金)は花バウ終演後に途中入場したため、少女時代~初夜の翌朝はどうだったか不明。

昨日はりくルドルフ楽(私には初見)ということもあって2人の関係性を興味深く見たのですが、ルドルフへの接し方も新しくかんじました。
「ごめんなさいルドルフ。陛下には頼めない」というところ、これまではシシィの自己中心的性格がうかがえ、突き放し方も強くて「ごめんなさいって謝ってるけど口だけ」感があったのですが、みりおんシシィの場合は「助けられたらいいんだけど、でもできないものはできないのよ。ごめんなさい」と思っていそうでした。
エゴイスト度は低め。

そのあとルドルフの死を迎えるわけですが、りくルドルフがいかにもナイーブそうだったこともあってか「あなたは最後に安らぎを得たのね」が悲しみつつも少しほっとしているように聞こえました。

これまでのシシィ(と言って、過去の全シシィをひとくくりにするのは乱暴な話なんですが)は『エリザベート』という作品の大枠があって、ハプスブルク家やその歴史の中で対立する存在として位置づけられていたように思えます。
が、今回のみりおんシシィはまずシシィという一人の女性がいて、彼女ありきで『エリザベート』という作品が積み上げられている――そんな印象を受けました。
まずシシィありき。
皇妃エリザベートという人物にとても丁寧に接し、新たなアプローチをしているように思えます。

だから「ああ、今回のシシィは新しいな」と興味深いんです。
数学の別解を見ているような、そんな楽しさです。

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