『男たちの宝塚』

雑誌・書籍

辻則彦氏の『男たちの宝塚―夢を追った研究生の半世紀』を読みましたよ。
かつて宝塚にいた、宝塚男子部の「男子研究生」の生徒さんらの話です。

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やがて成長していく生徒(少女)たち、彼女らを包括して新しい国民劇にするという考えのもとで集められたものの、内外の反発は強く、日の目を見ぬまま、宝塚の歴史からもほぼ忘れられていた――あるいは、なかったことにされていた――男子研究生の存在と、その後を追った本です。
私は観ていませんが『宝塚BOYS』という舞台にもなりましたね。

生徒さんの中には、これまで自分が宝塚の生徒だったことを家族にも隠していたという方もいます。
「乙女の花園・宝塚」という夢を守るために。
自分の存在が明るみに出てはいけないと思いながら半生を過ごしていたんですね。

彼らの存在を最初は気の毒だなと思っていたのですが、人生を追ううちにそれだけじゃないなという気持ちになりました。
人によりさまざまですが、別の舞台俳優になった人、ダンススクールを経営する人、中にはタカラジェンヌと結婚した人も。
もちろんこれだけをもって「よかった」とは言えませんが、ただの歴史の影と呼び、不憫な人たちとして扱うには厚すぎる人生の幅があります。

男子研究生の存在は、宝塚100年の歴史のあらゆる試行錯誤のうちの1つではありますが、彼らの存在によって「宝塚とはなにか」「観客が求めているものはなにか」という輪郭がはっきりした部分もあるでしょう。
なにごとも順風満帆にはいきません。

ひとつ驚いたのは、男子部以前の「宝塚歌劇音楽学校」(大正時代あたり)の「選科」に入学した男性の中には演出家・白井鐵造氏もいたということです。
白井氏は第二期生とのこと。
宝塚の舞台への男性加入という考えがなければ、『花詩集』も生まれていたなかったのかもしれません。

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