『風の次郎吉 ―大江戸夜飛翔―』感想・9

花組,専科

ダブルヒロインのうちの1人、というか、ヒロインとしてはこちらがメインかなという「手妻の幸」は仙名ちゃん。
上手かった――――!!

歌もダンスも芝居もうまいの。
やっぱり歌が上手いっていいわ。
主演のみっちゃんと合わせて、耳福なコンビでした。

持ち味が女役傾向で、あんまりヅカっぽくないところもまたみっちゃんに合うんだよね。
それが宝塚の舞台としていいのか悪いのかは正直よくわかりませんが、今回はよかった。

出演者みんな芝居に歌にダンスに殺陣に三味線に、と大変な公演でしたが、仙名ちゃんは三味線の弾き語りに加えて手妻もあるから一番大変な人だったんじゃないかなぁ。
いやほんとお疲れさまでした(まだ東京公演は終わってないけど)。
これも仙名ちゃんだからこそではあります。
こんなに大変なのに、歌や殺陣などの安定感がハンパないし。

幸が登場する手妻の場面の歌「よってらっしゃい みてらっしゃい 話だけでも聞いとくれ」だけで満足しかけたもんね。

そして次郎吉とやりあって刀を抜く場面がとっても怖いです、仙名ちゃん。
でも昔より抑制がきくようになったなぁ。
濃い中にもやりすぎ度が低くなったと思う。
だから舞台で浮かなくなったし、上手さが鼻につかなくなった。

女鼠のときのスタイル、脚のかっこよさにやられました。
あのザッツ筋肉な脚がいいよなー。
ああ、運動神経よさそう。

ダブルヒロインでも人物の背景にあまり書きこみのないあやめと違って、お幸はいろんなものを背負ってます。
父親のことなどはベタなんだけど、ちゃんと血肉化しているのがいい。
「鼠小僧」への執着が悲しくも、その後の成長へときちんとつながっていく。

で、次郎吉と結ばれるかと思いきや……なのね。
自分が旅立つとともに仲間の背中を押す役割もする。
もう片方のヒロイン・目明しのあやめ役のべーちゃんとバランスを取ったようにも感じたけれど、それでも去り際の姿は優しくてあたたかくてどこか悲しくて、美しかった。

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