『風の次郎吉 ―大江戸夜飛翔―』感想・7

遠山金四郎景元(金さん)を演じた瀬戸くんはめちゃくちゃかっこいい。

金さんは至るところで女をはべらせきゃーきゃー言わせてるんですが、嫌味がなく、ていうか瀬戸くんだからモテモテ設定なのもさもありなんでした。
そりゃ女がほっとかんわ。
でもって次郎吉とも気持ちよく男の友情を築ける。ほんとにイイ男です。

顔はクドくてやっぱり悪役のほうが似合いそうではあるんだけど(笑)、そこをさわやかに仕上げました。
気風がいいだけじゃなくて世慣れていて愛嬌があるんだよね。

両袖をパッと広げながら「じーろさんっ」と呼びかけるとか、頭上で手で耳を作りながら「ネズミはやっぱりネコが苦手かにゃー」(セリフうろおぼえ)とか……ぶっちゃけあんまり似合わなくてそれがかえって可愛いような愛おしいようないたたまれないような微妙な気持ちにもなったのですが……面白いものを見せてくれてありがとう、サイトーくん。
(面白いものて)

飄々と世の中を渡っているようでいて、それだけじゃなく内面が感じられるのがいい。
ちゃんと人物像に奥行きが感じられるんだ。

中でも、石川一馬と会話しているところとその後が好き。
「これはしたり」と調子のよさそうなところを見せ、けれど石川と別れたあとは「けったくそわるい」とばかりに内心を見せる(これがまたかっこいい)。
この切り替えがとてもよかった。

役職につかず飄々と世を生きていた金さんが、次郎吉と出会って自分の道を見つける。
青天で役職を拝命し、のちの名奉行・遠山の金さんになるであろうところまでが示唆されます。

この青天がまた似合うんだ。
そして瀬戸くんはどうも芸風が生真面目なので、着流しで飄々としているよりも青天でかっちりしているほうが本質的には合ってるよなぁ、うんやっぱり「こっち」だよなぁ……と、最後の最後に腑に落ちるような感じがしました。
もっとも、本人の性質とは違うものをきちんと演じられたというのが、役者としての成長なのでしょう。

ここ1~2年ほどで与えられた役(キキバウ2番手、『New Wave! -花-』メインのうちの1名、かれーバウ2番手など)とそれへ取り組んだ成果が実を結んだのでしょう。
歌やダンスで「魅せる」まではいっていませんが(でもヘタでもない)、ともかくも瀬戸くんは男役としての存在感を増して「大きく」なりました。
むやみやたらにパワフルで芸達者なみっちゃんと組んで存在感で負けないってすごいことだと思う。
ちゃんと友達に見えたのがすごいと思うわ。

こんな勿体ない人をほっとかないでほしいんだけどな、劇団。

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