『SANCTUARY』感想・2

宙組

観劇にあたって、登場人物をウィキで下調べしたり、モー様の漫画を読んでおいたりしたのですが、正直なところ予習はしなかったほうがよかったかもしれません。
気負って期待して観たぶんだけ、膝カックンされた感じ……。
それがなければもうちょっと素直に楽しめたような気がするんです。

予習の結果うらら様演じるマルゴが「ギーズ公を愛しながらも心ならずもアンリと結婚する」「アンリと冷え切った夫婦関係を送る」というドロドロした昼ドラ的なもので想像していたのに、実際の舞台では「ギーズ公からは一方的に愛されているだけ」「アンリとは、最初はともかくけっこうあっさり心を通じ合わせる」という、なんか少女マンガ的清らかさのあるものになっていました。
典型的な宝塚の白いヒロイン像にかなり寄っていた。
肩すかしくらった。

マルゴについて、プログラムの「人物相関図」にはこう説明がされています。
『シャルル9世の妹。絶世の美貌を謳われる王女。奔放を装うが、宮廷の確執の中を孤独に過ごす。』

田渕センセイのクセなんだと思いますが、具体的なエピソードで人物を描くのが苦手。
マルゴが奔放を装う――って、どこが?
(彼女の登場シーンで遅れてきたところか? それと、アンリとギーズ公のキスについてのコメント?)

アンリとマルゴが冷え切った夫婦生活を送るのかと思いきや、心が近づくのも早くてびっくり。
『Victorian Jazz』では「私とあなたは似ている」が恋に落ちるポイントだとしたら、『SANCTUARY』のポイントは「あなたは寂しそうな眼をしていた」だっっ。
安直っ。そして展開が早い。

「すれ違い夫婦が、きっかけがあって、寄り添うようになる」という流れが決まっていて、それに沿うように物語が作られている。
が、書き込みが薄いので観ている私の心情が追いつかない。
必要最小限の情報だけをハイどうぞと差し出されている気分だ。
情緒的な書き込みがほしい。

全体に人物造形が弱い。
田渕センセイが私の好みじゃない最大の理由はそれだと思う。

もう1点、田渕センセイの残念なところは、登場人物がカッコつけて話してるわりに心情を易々と明かしすぎなところである。

カトリーヌがマルゴに「私が安らげる日などなかった。お前はまだ幸せよ」と言うのが早すぎる。
宮廷での苦悩をもっと見せてからとか、えげつない冷酷さをもっと出してからとか、もうちょっと勿体つけてくれんか。
ラスボス的雰囲気を背負ってるのにあまり簡単に弱さを見せてしまうと、チャチい人に見えてしまうのよ。

ギーズ公が「アンジュー公を殺したのは俺じゃない、お前だ」的なことをアンリを前に滔々と述べるところは、特撮物の敵かと思ったぜ……。

演じる人じゃなくて書き手(脚本・演出家)に腹芸が欲しいなぁ。

0

宙組

Posted by hanazononiyukigamau