星大劇版ロミジュリ感想・3

2020-12-14星組公演感想,星組

6月1日(土)にダブル観劇してきた感想の続き。
キャストはAパターン。

今回のスペシャルは間違いなく乳母のさやか。
すごくよかった。

びっくりしたのが歌のうまさ。
そこそこ歌えるのは知ってたけど、勝手に「そこそこ」だと思い込んでたんだよね(なんせ入団成績が悪くて……最終成績はそれなりなんだけど)。

音域の広い「あの子はあなたを愛している」もきちんと歌いきった。
歌そのものだけで言えば絶賛するレベルではないのかもしれないけれど、芝居の歌として素晴らしかった。
心情が伝わってきて泣かせる。
心に沁み入る。

さやかさんの歌は役者さんの歌、という感じ。
だから「ミュージカルナンバーを1曲歌いあげた!」的な華々しさや派手さは感じられない。そこを物足りなく感じる人はいるかもなぁ。

でもちゃんと上手いんですよ。
彼女も歌ウマぞろいの84期生だもんなぁ……。

ただ声量はあまりないかな。
あえて抑えているのか単純に声量が「ない」のかの判断はつかないけど。
でもそのおかげでというか、ロレンス神父とのデュエットでは相手の声を邪魔しない。きちんとサポートに回っている。

さやかさんの乳母は、包み込むような優しさがある。
春の日に干したお布団のようなあたたかさ。
そして篤実。

見るからに「おばさん」なのもまた良し。
ジェンヌ的にどうなのかはさておき。

そして歴代の乳母にくらべて控えめ。出すぎていない。

これまでは「私は一家を担っているんです!」と思っていそうな自己主張型の乳母が多かったんだけど、彼女の乳母はあくまでも陰で支える立場の人に思える。
彼女=乳母の自意識が主人一家からは一歩下がったところにある気がする。

――観ていて「日本人が好きそうな“乳母”だなぁ」と思いました。

さやかの乳母が非自己主張型なのは、彼女のこれまでの育ち方によるものかもしれない。

初演のれみちゃんは言うまでもなく娘役スター。新公ヒロインもバウヒロインも経験し、娘役2番手までつとめました。
再演のコマもまた男役スター。新公主演も経験し、ダブルとは言え東上つきのバウ主演もしたことがあります。
再々演の美穂姐は路線でこそないものの、ショーでエトワールをつとめるなど大きな場面を任されてきました。

さやかさんはそういう経験がほぼない。
最近でこそ芝居で脇の大きな役を貰うことが増えたけれど、決して「スター」的な扱いをされたことはないはず。
記憶にないもの。

脇に徹して、自己主張せず、役に自らを埋没させる。
そういうジェンヌ人生の歩み方があの乳母を作ったような気がする。

(スターさんだと「魅せる」ことが使命になってしまうというところはあるかもしんない)

ともかくも、素晴らしい乳母でした。
乳母がシングルキャストで、Bパターンでもさやかだというのが嬉しくて仕方ありません。

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