『月雲の皇子』感想・2

月組

恋だけでなく、政治や歴史や文化、そこに生きる人々のさまざまな思惑が絡み合った作品が好きです。

登場人物はみなさまざまなバックボーンをもち、それが彼らの性格や生き様に反映され、またそんな彼らが出会うことで生まれる喜びや悲しみ、起こった奇跡や悲劇が心を揺さぶります。
それらが時代背景を裏付けにした「どうにもならない」「なるべくしてなった」ものであればあるほど、物語に厚みを感じます。

この物語に一番厚みを感じたのは「渡来人」の扱いでした。
はっちさん演じる「青」とまゆぽん演じる「博徳」の2人。
当時の先端をゆく知識人・技術者などでありつつも、彼らもまた故郷に迫害された者。すなわち「土蜘蛛」なのです。

この2人の一筋縄ではいかなさ、したたかさに唸りました。
故郷を追われ生きること、また、人ひとりの身の処遇などいともたやすく決められる国家権力というものなどに思いをはせます。

下に、第一幕のストーリーを書いておきます。
ネタバレありなので、読みたい方だけどうぞ。
1回しか観劇していないので勘違いなどがあったらすみません。
第二幕については力尽きたので、えーと、実際に観て下さい……。


※ネタバレありなので注意。※

幼いころ、朝廷の「土蜘蛛」討伐に木梨と穴穂は隠れてついていった。
「土蜘蛛なんていない」「倒されているのは自分達と同じ人間ばかりだ」ということに衝撃を受ける。
ひとりの母親が二人の目の前で殺される。
二人は彼女が連れていた赤子を大和の村で拾ったことにして連れて帰る。
その赤子は衣通と呼ばれ、二人の皇子と同腹の妹として育てられる。

時は経ち、皇子たちは成長した。詩文に優れ人の情を解する木梨と武勇に長け冷徹な判断のできる穴穂。
皇位を継ぐのはこの二人のうちどちらかであろうと目されている。
允恭天皇は病に臥し、三輪山の巫女である衣通が病気平愈の祈りのために召還される。

衣通が戻ってきたので歓迎の宴が広げられる。
木梨と穴穂は舞で競う。
衣通は巫女であるため“兄弟”とはいえ木梨・穴穂と言葉を交わすことはできない。

木梨と穴穂は師・博徳の館を訪れる。
博徳は渡来人。
歴史とはどんなものか、勝者が作り伝える史書とはどんなものかが語られる。

ある日、允恭天皇が次代を誰に継がせるべきかを家臣に問う。
乱世なら穴穂が、平時なら木梨がふさわしいと博徳は答える。
青は穴穂を推す。
天意が穴穂にあるかどうかをはかるため、穴穂に雨乞いをさせることが決まる。

雨乞いの日。
穴穂が舞えども舞えども雨は降らない。

そのとき神殿に盗みに入った「土蜘蛛」の子供=ティコが捕らえられる。
ティコは雨乞いの生贄にされそうになるが、笛と歌により木梨が雨を降らせる。
天意を動かしたとして皇位継承者は木梨に決定する。
褒美を問われた木梨はティコを要求する。

ティコは命を助けてもらった礼に天に向かって飛ぶ「月蜘蛛」の話をする。
木梨はティコを帰そうとするが、穴穂はティコを殺す。

その夜、木梨は衣通の寝所を訪れる。
混乱・悲傷のためか「ティコを自分が殺した」などと言うが衣通にはそれが嘘だとわかる。
心を通わせる2人。

一方穴穂は出生の秘密を青から聞く。
かつて母・大中津姫は青ときまぐれさゆえに情を交わしたことがあり、穴穂の父は実は青であると。
青は、敵国と戦う祖国が大和から援助を受ける交換条件として渡来してきた者。
祖国の権力によっていともたやすく家族と引き離され異国へ追いやられた彼は、その地で生きながらえ、血をつなぐことにしたのだ。

允恭天皇が崩御。
木梨が皇位につこうとするそのとき、青が異を唱える。
「木梨と衣通が昨晩情を交わした。三輪山の巫女を汚した木梨に皇位につく資格はない」と。

木梨はそれを否定し青は捕らえられるが、青は穴穂が知っていると言う。
穴穂は迷いつつも2人が逢引していたと「証言」する。
また、允恭天皇の崩御は巫女が禁忌に触れたからとして衣通の島流しを主張する青。
それを聞いた木梨は「自分が無理強いしたことだ」と言い、衣通ではなく木梨が配流されることとなる。

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Posted by hanazononiyukigamau