『南太平洋』感想・3

星組,専科

主演の理事様は、主役の立ち位置でありつつも、どこか俯瞰しているような印象を受けました。
役柄のせいかな?

エミールはフランス人の農園主。
南の島で暮らしているけれど、現地の人ではない。
本来なら戦争には加担しなくてよい民間人。アメリカ人でもないし。

ネリーは知らなかったけれどエミールは2人の子持ちだ。
島で恋に落ちる彼らはいったい何歳差なのだろう?
風ちゃんは実年齢や学年のわりに落ち着いた感じの娘役さんだとは思うけれど、それでもいくらなんでも理事様のエミールと同年代ではあるまい。

たぶん10歳くらいは年齢差があると思うんだ。
彼がわけあってフランスを離れ、南の島へ来て、恋をして、恋人(妻?)を亡くし……という時間を考えても。

そんな彼が若い娘に真剣に恋をし、パーティー後にはおどけ、子持ちと知った彼女の受けたショックに困惑し、そして戦争を終わらせることに命をかけて加担する。
節を曲げても。

年齢を感じさせる演技。
だからこそ、重い。
彼を変えたものの存在が大きくなる。

俯瞰する位置で飄々と生きていた彼が動き出す。
戦争に加担し、エミールは「主役」になる。

真風のジョセフと年齢も国籍も超えた友情を得、しかし戦地で親友を失い、彼は無事帰還を果たす。

エミールが戻ってくる場面、ネリーは彼の子供たちと食事をしている。
「いい子にしていたらすぐに帰ってくるわ」スープを注ぎ、彼らの母親のように世話を焼く。
ネリーが感情移入しやすいキャラであり、また彼女の視点で物語が進むから、ラストはやはりネリー主役の物語になって終わる。少なくとも私にはそう見えた。

けれど理事様の存在感が薄いわけではなくて、彼の存在に大きく包まれながら物語が進んでいったような感じがした。

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