『NO WORDS,NO TIME』感想・2

OG

物語はざっとこんな感じでした。
1度しか観ていないのでうろおぼえですが……。

妻と幼い息子を失った男の物語から舞台はスタートします。
東山さんサイドですね。

無気力な彼は1人で無表情に食事をし、窓をあけては車のスリップ音にあわてて扉を閉めます。トラウマなのでしょう。

通勤電車の中、彼の姿を追う若い男性(田口さん)がみえますが、東山さんはそれに気づきません。
そのうち田口さんは東山さんを見失います。

彼の職場には彼を愛する女性管理職(黒田さん)がおり、モーションをかけてきます。ですが東山さんは逃げ、家に帰ります。

東山さんは2つのプレゼントを用意します。一つは亡き妻にあげるバッグ、一つは幼い息子への消防自動車のおもちゃ。
包装紙からしてクリスマスなのでしょう。

もう一つの世界では、妻と成長した息子が亡き夫を思い暮らしています。これは田口さんと花様サイドの物語。

妻は夫同様、窓をあけては車のスリップ音に扉を閉めています。
息子がプレゼントを妻(彼にとっては母)に渡そうとしますが、彼女はかたくなに拒みます。

彼もまた会社に勤務しています。
通勤電車の中、彼を追う男性(東山さん)の姿がみえますが、東山さんの世界同様、田口さんが東山さんの姿に気づくことはなく、またつかまえることもできません。

会社では女性管理職が彼にモーションをかけてきますが、彼は受け入れる気はありません。

この2つの世界があるとき交わりあいます。東山さんが田口さん側の世界にやってきたのです。
夫は息子の成長した姿を知りません。
2人の間で妻の取り合いになりますが、彼女の持ってきた写真(遺影でしょうか?)によって夫は事情を把握します。

3人は喜び合いますが、長くは続きません。
本来その世界にいてはならない夫はパラレルワールドの「管理局の官憲」によって追われることになります。
あらゆる手で妻と息子は夫を隠そうとしますが、追手はきびしく、それは叶いません。

(これ以降のストーリーはきちんと把握できてないのですが)
追手の1人に女性管理職の姿をした人がいますが、彼女はなぜか彼を逃がしてくれます。

元の世界に戻った夫。
再び電車通勤と勤務の日常がはじまりますが、舞台には女性管理職の赤い服を着た妻の姿がありました。

――長々と書きましたが、脳内補完やらなんやらで、たぶん間違ってると思います。

ダンスと音楽のみでつづられる物語は、2時間弱ノンストップで行われましたが観客の集中力を切らしません。
しかし言語による説明がないためどうしても観る側の想像力にゆだねられる部分が大きく、こちらの想像力が描かれたものに及ばない場合がありますから。
ですから、東山さんが管理局の官憲に追われて逃げていくところからはっきりとはわからない部分が出てきました。

とはいえ、面白い舞台でした。
夫を追う官憲と、なんとか匿い・逃げようとする3人のやりとりは非常にスリリングです。

はじめてナマで見た花様は透明感と非現実味と悲しさがありました。

東山さんサイドの物語で、彼が眠っているときに現れたその姿。
「この世ならぬ者」の、異質で儚い存在感があります。
近くにいても手に届かない、永遠に失われた人。

田口さんサイドの物語では、プレゼントのやりとりにこちらの胸が痛くなりました。
悲しい目で、でも頑なに受け取りを拒む。

クリスマスは夫の命日なのでしょうか。
プレゼントを拒否する姿はクリスマスを拒む――夫の死を受け止められない彼女の悲しさで、息子である田口さんの辛さも伝わってきます。

官憲から夫を匿う姿には、彼女の愛と強さが見えました。
この場面は息もつかせぬ展開にこちらの心がひりひりするほどです。

最後のシーンがうまく解釈できないのですが、花様が女性管理職の赤い服を着て出てきたというのはなんなのでしょう。
妻が失われた世界でも、妻は別のかたちをとって存在するということでしょうか。

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OG

Posted by hanazononiyukigamau