『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』感想・1

雪組

1幕の終わりのこと。

「自分で起き上がるんだ。それができなければお前は一生倒れたままだぞ」

包帯を取られ、ベッドから起き上がり動き始めたピノコ。
まだ足取りもおぼつかない彼女が転んで泣き叫ぶ。
ブラック・ジャックはそれを見下ろしながらこのセリフを言い放つんだ。

ずん、と心にのしかかった。
冷たい。けれどあたたかい。
手を貸すだけが優しさではないと伝わるから。

ブラック・ジャックは冷徹さを表面にまといながら、誰よりも熱い血の通った男でした。
「生きている価値なんてあるのかよ」とカイトに言われての激昂には、ピノコへの思いが痛いほどに伝わってきました。

このときピノコはいまだベッドに横たわったまま。
たまに人の脳へ直接力を加えるけれども姿はみえないので基本的には舞台に存在しないようなもの。
それがブラック・ジャックのまっつの演技によって存在感がありありと出てくるんだ。

そして彼女の言葉によって、ピノコの存在がくっきりと浮かびあがり、ピノコの生を語るブラック・ジャックに心が痛くなります。
だって「こんなので生きているといえるのか」というカイトの言葉、それに通じる気持ちを私も持っているから。

そんなピノコがバイロン侯爵(ともみん)の助力を得て起き上がり、舞台上に可憐な姿を見せるのが1幕の終わり。
生まれたてのひなどりを思わせるような歩き方。なにもかもが不安定。
当然倒れ、そして記事冒頭のセリフにつながります。

全力で起き上がろうとするピノコが放つ一言。

「アッチョンブリケ!」

これで1幕は終わりです。本当に(笑)。
なかなかに、呆然としました。
回りも拍手しかねている感じでした。
「え、終わり? ここで終わりでいいの?」みたいな。

斬新な幕切れ――ということでよいのでしょうか。
私は嫌いじゃないです。
1幕の終わりだとわからなかったから、すぐさま拍手できなかっただけで。

0

雪組

Posted by hanazononiyukigamau