月版ロミジュリ感想・13

2020-12-14月組公演感想,月組

みりおのロミオはすごく正統派な感じがしました。

ちゃんと白い。
ちゃんと若い。
すごく甘い礼儀正しく優しい王子様。

砂糖菓子のようにふわふわして、口当たりのよい、人を幸せにする人。
しかもすごくしっかりしてるし…。
(ちなみにまさおロミオはだめんずの匂いがします)

みりおロミオは老成している。
若くてもその性格ゆえに暴走できないし、行く末も見えてしまう。

まさおロミオがその若さゆえに命を落としたのだとすれば、みりおロミオは両家の争いゆえに悲劇が起こったのだと思う。
まさおロミオの悲劇は彼の直情性にゆえんしているけれど、みりおロミオの死はあらがえない両家の宿命だと思う。
だって、あのみりおロミオに避けられなかった不幸を、誰がどうできるというのだ。

みりおロミオは慎重だ。
笑顔で、まっとうな天使で、仲間もたくさんいる。
けれどその中で一人醒めている。それが彼の不幸。

気づかなくてもいいことに気づいてしまい、両家の争いも現在が内包している翳も、自分の無力さを知りながら放っておくこともできない。

もし状況を打破できるとすれば、キャピュレット家の娘ジュリエットとの結婚だけ。
それゆえに彼女に恋をしたとは、けして思わないけれど。

まさおロミオが恋をして大人になったのとは対照的に、みりおロミオは少年としての自分を取り戻したようにみえた。
自分を鎧っていたものから、ジュリエットの前では解き放たれる。
はしゃぎ、声がうわずり、――モンタギュー家の跡取りという立場から抜け出して、一人の少年になれる。

彼がのめりこめた少女、ジュリエットはきっと救いだった。
彼女との結婚は、両家の争いに終止符を打つものでもあったから。
彼女といれば、心に巣食う闇も見なくていい。ジュリエットは光だから。
2人でなら、翳も闇も、乗り越えていける。

みりおロミオで秀逸だったのは、ティボルトを刺したあとの演技。

我をとりもどしてからの表情がすばらしかった。
茫然とし、ティボルトを刺したナイフを汚らわしいものをみるように投げ捨てて立ち去る。
認めることのできない自分の過ちから逃げるような去り方。

そして大公の声に応じて姿を見せたときの憔悴した表情。
それから追放を言い渡されて、ロレンス神父のもとで「追放は死と同じだ」と嘆く幼さも、どれもが悲しく愛おしかった。

嘆いていてさえ、みりおの美しさには隙がない。どの角度からみてもどんな表情をしていても、圧倒的に美しい。
なんてことだ。
この美貌は価値だ。
みりおのロミオにはみとれずにいれらなかった。他を圧する美貌だもの。

でもって、これに並んで見劣りしない娘1なんているのか? と、彼の男1就任のときを危ぶむ(笑)。
いやほんと、大変っすよ…。
どの娘役より美しいんだもんこの人。

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