『華やかなりし日々』感想・2

宙組

『華やかなりし日々』感想の続き。
書いてみたらけっこう暗くなってしまったので下においておきます。

ネタバレ含みなうえに、中身が文句ばっかりでもいいよという方は続きをどうぞ。


観劇してから一晩経ったわけだが、その間にふつふつと疑問や問題点、ツッコミどころがわいてくる。
問題点に観劇中はほぼスルーして今さら気づくというのは私の頭が悪いからであるが、それだけでなく観ているときにはなんとなく楽しく感じられるという雰囲気のよさはあるんだろうと思う。

問題点を整理すると「やっぱり原田は原田だなぁ」というところに落ち着いてしまう。
キャパのように伝記小説系じゃなかったぶんだけ、作風に大らかさは出たが、登場人物のご都合主義さには拍車がかかった。

一番問題だとおもったのは、りんきらのロイが都合よすぎること。
強盗事件に引き続き暴漢として出てきて、自殺し、ゆうひさん演じるロナウドとの過去が明らかになる。
子供のころの思い出の硬貨を握りしめ、ゆうひさんと子供のころに貧民街で撮った写真を持ったまま亡くなる。

ゆうひさんに無心を断られた彼は強盗に走り、逃亡中にゆうひさん主催のパーティーに現れてゆうひさんを撃とうとし、警察に捕まり、そして自白をしないまま拘置所で自殺する。
ゆうひさんになにかを伝えるためにコインを握りしめて――。

あまりにも、ゆうひさんを中心としすぎている。
私は、りんきらがなにを考え、なにを思っていたかがわからない。

自白はしない。
写真は大事に持っている。
メッセージのためにコインは握りしめる。
相手を殺そうとする。
殺そうとした相手のことは警察には語らない。

ゆうひさんを守りたいのか守りたくないのかどっちだよ!
あんたはどうしたいのよ!

行動のつながりがわからない。
思考に一貫性がみられない。

「愛憎」と一言で片づけることもできるけど、なんせ書き込みが薄くてな。

結局のところ、主人公を中心に据えたご都合主義ゆえなんだと思う。
そんな理由で死ぬ人物は、不幸だ。

もう一人、殺されたわけではないけれど「ご都合主義」に翻弄されている人――みっちゃん演じるニック。
みっちゃんはゆうひさんの相棒。詐欺の片棒をかつぐ。
宝石のイミテーションを恋人のタラに送り、タラがやむを得ない理由でその宝石を質入れしたことから詐欺の疑いをかけられる。

みっちゃんは取り調べを受けた。
自白はしなかった。もちろん、ゆうひさんを守って。
証拠不充分ということかみっちゃんは逮捕されてはいない。けれど状況証拠その他からゆひみちコンビが犯罪をおかしていたことは確実だとテルは推理する。

ゆうひさんはテルに逮捕されることを了承する。ただし期限付きで。
テルが愛する幼なじみのすみ花=ジュディの夢を叶えるショーの開幕までは待ってもらうように、半ば以上は脅迫しながら。

ショーが開幕する。
終わったとき、ゆうひさんの姿はなかった。花束を残し、一人で逃げおおせたのだ。

――ちょっと待て、みっちゃんは?

状況からしてみっちゃんが詐欺の罪に問われないなんてことはあるのだろうか。
自白以外に証拠はなかったのだろうか。

みっちゃんが詐欺を働いていたという証拠はなく、ゆえに罪には問えないとしても、ゆうひさんを守るために自白をしなかったみっちゃんを完全放置で一人で去っていくという結末は疑問がある。
あらかじめみっちゃんを逃がす算段をつけるなり、それとなく別れを匂わせるセリフを言わせるなり、なにかあるはずだ。
そこのケリはつけてほしかった。

せめてみっちゃんが警察の調べを受けたことに苦悩したり心配したりする様子はほしかった。
でないと、ゆうひさんのロナウドが人からの愛情は無条件に受け取るくせに、相手のことはろくに考えていない自分勝手でひどい男になってしまう。

それもこれも「主人公のためにみんながいる」というご都合主義と主人公以外に人格を持たせない作風のなせる技だと思う。
ヒーローのためにあらゆる人は踏み台になるんだ。それに文句をつけることは許されない。

観劇中はなんとなく楽しく観られる作品なんだけど、冷静に考えると結構アレな作品なんじゃなかろうか。

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宙組

Posted by hanazononiyukigamau