『ル・ポァゾンⅡ 愛の媚薬』感想・2

2021-06-17花組公演感想,花組

ショーの冒頭は紫の帽子とマントでみつるが出てくる。
吟遊詩人として妖しい世界へといざなう役。

正直なところ、このみつるがいまいちだった。
いつもより覇気がないようにみえた。

2番手という大役への緊張なのか。
苦手の歌を任された重責によるものか。
あるいは、研13という学年のみせるものなのか。

乾いてるというか枯れているというか、額に青い縦線を入れながらなんとか笑顔で出ているような気さえした。

歌が得意だったらな、というのは今さらすぎる話だけれど、吟遊詩人のみつるにはそれを補って余りあるものが見えなかった。
あの大仰な衣装を着こなして観客を圧倒する体格のよさがあればよかったんだけど、みつるは小柄だし。
となれば勢いやハッタリとかで押し切ってほしかった。

私の勝手な想像にすぎないが、上級生になって回りが見えすぎて、向こう見ずに勢いで押し切ることができなかったのかな。
歌が下手なのは本人も承知のことだろうし、それで縮こまったのか。

バウ主演もしたことはあるとはいえダブルだったし、下級生も台頭している。
路線とはいえ少し引いたところ――はっきり言えばトップへの道はないだろうことを感じていて、おいしい脇寄りのポジションを確立しつつあることもあって、今回も引き気味になっていたのかもしれない、と思う。

歌が下手なのは今さらのこととして、それでもなお「よかった」といえる力をみせてほしかった。
それこそ華とハッタリで。
それが残念。

林檎を手にした毒々しい場面も、妙に地に足がついていて耽美さが足りないのも、持ち味と言ってしまえばそれまでなんだけど、芝居でみせる渋いよさが裏目に出てるんだろうか。
顔はキレイなのに。

みつるでよかったのはマタドールの場面。
蘭寿さんの影として出るんだけど、ここの動きの揃え方が半端ない。
腕の角度や踊るタイミングをきっちり合わせている。

そのシーンで自分がやるべきこと・求められてることがすごく見えているんだと思う。
そしてダンスが上手いから見ごたえがある。

番手その他いろいろ考えるべきことはいろいろあるんだろうけれど、吟遊詩人はだいもんで観たかったな。
歌レベルが上がるというのもあるし、まだ若いだいもんの経験値積みにもなる。
そして、そのほうがみつるがのびのびやれたんじゃないかと思うんだ。――その場合、ファンの心中は穏やかじゃなかったかもしれないけど。

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