『オネーギン』感想・2

雪組,専科

理事様演じるオネーギンについて。

観ていてさすがだなぁ、と。
観る側の好みはあるにせよ、彼女を否定する気にはならないしできないだろうと。
ただしみじみと思いました。

どのシーンでだったか、立っているオネーギンがいいな、と思った。
叫ぶでなく歌うでなく激しい演技を見せるでなく、ただオネーギンとして立っているその姿やあり方をいいなと思った。

それからあらゆる手紙を読んでいるときの表情。
劇中さまざまな手紙が送られ、手紙によって物語が動く。

母マリーヤからのかれを呼び戻す手紙。
タチヤーナからの愛の告白。
叔父から贈られた最後の言葉。

まだあったかもしれない。
それらを読んでいるときの表情の繊細さが胸をうった。
オネーギンの感情が痛切に響く。

なかでも芝居終盤に届けられる叔父からの手紙は、それを書いたヒロさんの演技との相乗効果がすごい。
本当に愛した人とは結婚できず、また周囲からは変わり者と呼ばれた2人であるがゆえに通じ合う言葉。
ヒロさんの台詞には愛があったし、それを受ける理事様の表情は真にせまる。叔父からの手紙が、言葉が、オネーギンを立ち上がらせたのだ、と思えるような。
派手ではないけれどもすごくいい場面だ。

男性の中でオネーギンを理解できたのが叔父のワシーリィーである一方、女性でそれができるのがリサリサ演じる舞台女優のニーナにあたる。
オネーギンの数多いる恋人のうちの一人で、かれのいい加減さに手を焼きつつ、愛し見守っている。

彼女とオネーギンのやりとりが好きだ。
芝居冒頭から2人でベッドに横たわっている後朝のふぜいでなかなかに観客の度肝を抜いてくれるんだが、田舎に帰ったオネーギンを追い、そしてタチヤーナから手紙を受け取ったオネーギンの様子にただならぬものを感じるその様子がせつない。

そしてニーナからのキスシーン。
オネーギンはガウンに手を入れたままそれを受ける。
心はニーナから離れている。けれどタチヤーナの愛を受け入れることもできない。
タチヤーナを愛しているからこそ、かれはそれを否定する行動を取らねばならない。心にもなく。

その葛藤がオネーギンの手を封じ込める。

ままならぬ状況のオネーギンの心の乾きとニーナのやるせなさを思って、胸が痛い。


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