『麗人』感想
さて、『麗人』の感想を書こうと思うんですが考えがうまくまとまらない。
もちろん面白かったし、ダンスは素敵だったし、「サイトーくん、とりあえずみんなにセリフを振るのはヅカ以外の舞台でもなんだなぁ」と感心したし、真波さんはとにかく美しくて歌もセリフもこれでもか! とあったし、これを退団してからの3週間ほどで作り上げたのか! という「元ジェンすげー」な気持ちもあったし…なんだけど。
なんかすっきりしないのはなんなんだろう。
サイトーくんって川島芳子好きだよね。
あと太平洋戦争を舞台にするのが好きなのかな。
いくつかそのあたりの作品を手がけてるよね。雪ヤンブラとか『愛しき人よ』とか。実際に見たことはないけど。
真波さんの演じた「川島芳子」。
清朝の王女に生まれ、日本人の養女となり、養父から犯されたことをきっかけとして「男装の麗人」となり、中国などで諜報活動に携わったことから戦後漢妍として銃殺される。
真波さんが演じるのは髪を切った「男装の麗人」以降のところ。
美しくエキセントリックで繊細で、外面的な強さと内面の脆さを持ち、そのブレが悲しくも魅力的な役だ。
芝居は囚人である川島芳子が独白するところから始まる。
舞台には粗衣をまとった真波さんただ一人。
「海ゆかば」を歌い、
きみはピエロみたいだね。
みんなが笑っているよ。
まるでコメディアンだ。
そんな感じの言葉を客席に投げつける――、言うまでもなく、これは芳子の自嘲。
軽く、どこか浮いている歌声が芳子の置かれた状況で、安物の、おもちゃの刃物を振りかざすようなセリフの言い方が芳子の性格なのだと思う。
最初は真波さんの歌声にもセリフにも、いくらかの違和感があった。
私が芳子をつかめていなかったから。
舞台が進み芳子という人物がわかっていくにつれて、あの微妙な違和感が芳子そのものを現わしているように思えた。
だから最後に冒頭と同じ場面が繰り返されたときには歌も芝居もすんなりと受け入れられた。
ただ、全体として、サイトーくんの描く芳子は「人物」ではなくて「キャラ」だなぁ、と感じた。
どこがどうとは指摘できないんだけど、感覚的に。
川島芳子の背負うものの大きさ、ドラマに惹かれ舞台にしたんだろうけれども、彼女自身のもつブレや繊細さは、彼には扱いかねる素材のような気がする。
川島芳子をキャラではなく人物として捉えられる人の脚本・演出で見られたらどれほど恐ろしく凄まじいものになったろうか、と思う。
とはいえ、そんな凄まじく重いものを世間の人が観たがるか? と言われるとよくわからない。
今回の舞台は「ダンスオペラ」――ダンスありきなのだろうし。
途中で入った「れーいじん、れーいじん♪」のアイドルソングっぽい主題歌(だよね?)に軽くぶったまげつつ、「このほどよい軽さがいいのかもなぁ…」とも思う。
が、やはりなんだか複雑である。
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