『Je Chante』感想・2
『Je Chante』でのみーの初登場は1幕の最後、それも幕を下ろすほぼ1分前という遅さだった。
一応2番手格だろうに、登場が遅すぎて出演者であることを忘れるほどだったよ。
せめて1幕のはじめあたりにパリの街をイメージしたショーアップされたシーンでも作って「男A」くらいの見せ場を与えておけばよかったのに。
みーの1幕の出番が約1分(1分もなかっただろう)という短さだったのに軽く気が遠くなった。
それでも2幕はけっこう出るみたいだし、その出番次第では仕方ないかな、と思っていた。物語上の都合もあるだろうと。
なによりちょっとだけ出たみーはかっこよかったしな。
うっかりすると新公みたいになっちゃうメンバーの中で、そりゃもう異質なくらい「男」だったし。
外見もだけど声が低くてかっこいいのよ!
で、2幕ですよ。
みーの役はナチス親衛隊の少佐、ゲオルグ=シュタイネル。アリス演じるジジを愛人にしている。
権力があるもんだから、舞台を中止させることも劇場を封鎖することもできる。
ジジたちの運命はかれの胸先三寸しだいでいくらでも変わる。
ゲオルグはジジを愛しているという。
ベルリンへ連れていきナチスのプロパガンダ映画のヒロインにするという。
ジジはその出生の秘密もあって頑なにそれを拒むがゲオルグには理解できない。
「愛している」と何度も口にし、従わせようとする。
自分の頼みを拒まれ、彼女が自分以外の男に心惹かれていることにも薄々気づき、ジジの生まれの秘密を知り……彼は激昂する。
「私を騙していたのか」。
……みーの役って、書き込み不足だ。
「愛している」と彼は言う。
でも私にはわからない。
どんなふうに愛しているのか。
「愛している」と言いながら、彼女の意にそまぬことを強いる気持ちがわからない。
いや、だいたい察しはつく――というか、想像で補完することはできるんだ。
ベルリンへ連れていけばシャルルと引き離せること、ナチスの親衛隊に属する彼にとって、プロパガンダ映画のヒロインになるということは栄誉であること。
だが彼はジジにも観客にも語らない。
彼女をプロパガンダ映画のヒロインに据えることで、当時のドイツでは彼女が名声を得られるのだと、そう信じていたと語らせればいいのに。
そういうのを抜きにして「愛している」「騙していた」では、感情の振れ幅のでかい、自分の望みを押しつけるだけ男になっちゃうのよ。
なので、2幕途中からみーの役は私にとって「かっこいいけどうるさくてめんどくさい男」になりました。
本当は、クールに見えて熱い男にしたかったんでしょ?
悲恋をみせたかったんでしょ?
でもって狂気を見せたかったんでしょ?
熱さはあったよ。
狂気もあった。
ただ、性格に裏づけがなかったから、薄っぺらくみえちゃったんだ。
と、なんだかんだと文句を並べてますが、みーのゲオルグがかっこよかったのはほんとなの。
「男」っぽい――というよりは、オスくさい。
オスっぽさを軍服に包み隠してるんだからそりゃーたまらんかっこよさでありました。
ぎゅうぎゅうに押し込められた精神から放たれるエロスというのはいいですよなー、とアホっぽい言葉で締めておく(笑)。
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