アイーダ感想・2
演出のキムシンはビジュアル的なところはあまりはずさない。
衣装も装置も。
装置は大きなピラミッド型のもので、これが真ん中から割れたり、さらに角度が変わったりして場面をつくる。
また、ピラミッドに扉や穴がつくられていてそこから登場人物が出入りできる。
2幕、アイーダがエチオピアの民から責められる場面での民の登場の仕方にうなった。
装置に作られた穴から這い出るようにして登場。
それがとても不気味で。
じわりとまといつく空気。
アイーダを束縛するものが具現化された印象的なシーンだ。
アイーダ役の瞳子ちゃんは女優になっても違和感がなかった。
可憐で芯の強い王女だった。
「アイーダの信念」に説得力がある。
ともすれば理想論を語っているだけになりかねない歌だけど
瞳子ちゃんが歌えばそこに力が感じられる。
歌の上手さはもちろん、そこにアイーダとしての芝居がきちんと入っているから。
憑依系の役者ではなく作りこみ系の人なんだろうなぁ、という気がしているんだけど、
その作りこみ方も見せ方もすごく高いレベルで出してくる。
観客に登場人物の内面を伝えたり感情移入させたりできるスキルがある。
しかもそれを「スキル」なんて乾いた言葉とは相容れないような生々しさで見せてくる。
前述のエチオピアの民に責められる場面。
家族や国にうとまれ、責められ、追い詰められながら1人の女として生きようとし、
彼女みずからも己を責める人々を心ならずもなじる…。
この場面の悲痛さがこちらの胸につきささった。
それからアイーダは虜囚なのでいつも粗末な服しか着せられていないんだけど、
兄によるファラオ暗殺後、エチオピアに連れ帰られたアイーダが美しかった。
衣装も髪型もたたずまいも。
エジプトで纏わされていた粗衣から王女としての衣装に着替えたのに、
彼女がたたずむのは戦によって荒廃したエチオピアの大地だというのが皮肉なものだけれど。
あ、そうそう。
最後に何度かカーテンコールがあったんですが、そのときに、
「この公演も今日で折り返し地点です。これからも一生懸命がんばります」
的なことを座長の瞳子ちゃんが言ってたんだけど、
そのときに目が合ったラダメス役の伊礼氏が「はい」と答えたのに対し、
「ありがとう。とてもいいお返事でw」
的なことを返していたのがとっても瞳子ちゃんぽかった。
なんだかとってもお姉さん。
実際の年齢差を勝手に感じるのであった…。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません