『薔薇に降る雨』感想・5
ハリー作品に出てくる女の人は自分の頭でものを考えるから好きだ。
そして感情だけで動かない。
けれど感情がないわけではない。
クレバーで優しくて他人のこともちゃんと思いやれる。
そういう頭のいい女性が多いと思う。
で、まちゃみの最後の役となったヘレン。
まず話し方がすごく普通で。…舞台、それも宝塚のにしては似合わないほど普通の、現実にいそうな女の人の話し方で。
はっきりいってそっけないほど。
こういう話し方をするヒロイン(とあえて言う)がすごく新鮮だった。
タニオカさんのジャスティンがデートの時間に遅れても責めない。
でも耐えている風でもなくて割り切っている。
とてもクールに。
このクールさがまた、宝塚のヒロインとしては珍しい。
大体は耐える。悲しいけれど男を思いやって。
あるいは怒る。相手の考えが気に食わなくて。
もしなんにも感じていないとすればそれは相手を愛していないから。
だけどまちゃみのヘレンは違う。
耐えない。怒らない。でもちゃんとジャスティンを愛している。
ジャスティンに左右されてない。
男性中心に生きているわけではない。
彼女には彼女の人生があり、相手にもそれがあることをわかっており、2人以外の世界があることを知っている。
まわりの状況も見えている。
自分の感情はある。
けれど愛だけで動いたりはしない。
つきあうにしろ別れるにしろ男中心の決め方はしない。母だっている。
愛以外の要素が世界にはある。
何かを決定するにはさまざまな要因がある。
それでも彼女は愛しているから。
だから最後、感情のほとばしりをみせる。
痛いほどに。
こういう女の人はどこにでもいる。
すごくリアリティのある立ち方をしていた。
そして悩み方も、また。
ハリーの描いた「ヘレン」もさることながら、まちゃみの演じて作り上げた「ヘレン」という役が舞台上に息づいていた。
共感もしたし「ヘレン」という人を身近に感じられもした。
普段のクールで現実的なところと、最後に別れを告げる際の感情の揺れ。
この2つがブレないところが、演技者としてのまちゃみの素晴らしさだ。
最後にいい芝居を見せてもらえた。
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