短い芝居(第2幕第2場「最果ての町―或いはJにまつわる幾つかの所以―」)について。
芝居は全員が主人公で、全員に物語があり、とあるカフェで人生の一幕が同時進行的に繰り広げられる、というもの。
あーちゃんともりえとすずな。
園加とおときち。
ガチャとゆりあ。
この3組の物語が中心となっており、途中途中でアサコその他の登場人物が絡んでいく。
笑いあり涙ありの人生劇場。
登場人物全員(すなわち出演者全員)に歌のソロがありセリフがあり人生が用意されており芝居が用意されている。
だから出演者にはとてもやりがいのあるものだっただろうなと思う。
ただ、見る側が満足するかというとまた別だ。
出来は悪くない。
決して出来は悪くないと思うんだけど物足りなさはあった。
皆の話が同時進行で進んでいくだけに観客の視点が分散されてしまうからかな。
どうしてもトータルでのまとまりが薄くなる。
印象がぼやける。
誰かに感情移入できるとか特定の誰かの物語だと設定されているならばよくある形式だから見る側も楽なんだけど、今回はそういう形をとってない。
それでも力技で見せきってしまう演出家ならいいんだけど、残念ながらそこまでの力量はなかった…。
とある町の、特別ではない1日のお話。
マスター・越リュウの経営するカフェを舞台にした連作小説に挿入された掌編小説といった味わいだった。
これで、同時進行的に進む話がどこか一点に終結していくとか、誰かと誰かの人生がクロスして思いがけぬ方向に転がっていくとか。
そういう物語的な醍醐味があれば嬉しかったんだけど。
……くどいようだけど、決して駄作ではないと思う。
じんわりしみじみとした味わいがある。
こういう穏やかな話が好きな人はいると思う(中で起こってることは決して穏やかなことばかりじゃないけどね)。
ただもうちょっと焦点がくっきりしてるか、もう少しずつ個々のエピソードが立ってるとよかったかな。
(って私は評論家か?)
この芝居のハイライトはマスター・リュウ様と流れ者・ジョッタさんのやりとり。
他の登場人物を去らせて2人だけで語る。
ここは芝居の密度が濃かった。
そしてあーちゃん。
金持ちの未亡人を演じているが実は…、という役どころ。
こういう表と裏のある役はほんとに似合うし上手い。
この劇といい、ショー第1幕第3場「人形の家」の女Aといい、『夢の浮橋』の女一の宮といい、高貴で隠された内面をもつ女がハマる。
腹に一物ある演技がうまいんだよねー。それをいやらしくなくサラリと演じるのが素敵。
そして、どうしてこうも月組の副組長はかわいいのであろうか。
いつまでも初々しい。
歌もうまくて美貌で、なぜ管理職なのかが謎です。
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