『霧深きエルベのほとり』感想・5

星組,専科

1月に大劇場で観た『霧深きエルベのほとり』の感想の続き。
(まだ残ってた)

・水夫たちの中ではリーダー格になるトビアスかいちゃん、出番はあまり多くないような。
でも海の男の強さや、思い切りの良さがバシッと出てた。
結婚決めるの早いよ!
でもいろいろ考えずに行動が先に立つ感じなのだろう。

トビアスは男気があって、なにがあっても妻になるベティを守ってくれるだろう。
言葉少なく態度に荒っぽさはあるが、レトロな「かっこいい男」を見せてくれた。
背中や手や目線から、匂い立つような色気と包容力があふれ出る。

銀橋で歌い、「あばよ」で去る――この演出はもちろんかいちゃんの退団にかけた演出。
泣けるなぁ。

・しどーさんとぴーすけがなんか似てた。
いつもより見分けづらかった。

もしかして兄弟設定のせい?

・みっきーは、いつも声から役を作ってくる。
おかげで初見は「誰!?」だ。

みっきーの役は警部・カウフマン。
男役としてけして大柄ではないのに、重心低く、うかうかすると飲み込まれるような磁力のようなものを持っている。
迫力があった。

・じゅんこさんの女装にシクハン(一人でとうこちゃんの両親をやったやつ)を思い出した。
一人でウケてたんだが、最後は泣かされた。

酒場の女・ヴェロニカの見せるカールへの包容力は、べにーを小さいころから見守ってきた星組組長だった経歴あってのものかな。
「いつまでも男を待っている中年女」(それも婚約者とかじゃなくて、遊び相手レベルになりがちな港の酒場の女)という設定は笑いものにされがちだけど、苦労と情を背負った姿に愛があった。

・くらっちはあーちゃんの妹・シュザンヌ役。
清純なお嬢さんで、重くてじっとりしてる。

シュザンヌは清らかな乙女で、けして悪いお嬢さんじゃないんだけど、そこはかとなく「逃げてーーーーー!!!」感があるのはなんでだ。
「全てはあなたのために」と言いながら、想いが叶わないと魂を込めて恨みを投げつけてきそうな怖さがある。
(設定的には「あなたを恨まない」って言うだろうけど、気づいたら生霊飛んでそうな雰囲気が……)
この重さが時代劇だなぁ。

・はるこもまた、ザ・時代劇な女。
アンゼリカは運命に翻弄され、家のために犠牲になった美女である。

カールが上流階級の人たちに責められている姿にじっと耐える姿が美しい。
彼女もまた、同じようにつらい目に遭ったことがあったのだろう。

「耐える」という昔ながらの美徳を備えている彼女は、物語の舞台である上流社会の敵対者にはなり得ない。
敵対者ではないが、決して彼女が認められることもない。おそらくは「無視しても良い存在」でしかないのだから。
実際、夫以外の上流階級の人たちに相手にされている様子もない。

結婚相手が心から愛してくれる人でよかったなぁ。
オレキザキくんが「忘れ物は見つかったかい」「よかった」と言うセリフに愛と、言葉以上の含みがあっていいのよ。

それでも、アンゼリカが本当に幸せかというとわからないよねと思う。
たぶん、これは「Once upon a time in Takarazuka 」からは外れた現代的な感覚なのだが。

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